2021/02/14

WELLNESS

ストレスやイライラや不安…その原因は、睡眠不足かも?|西谷綾子さんが解説

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私たちは人生の3分の1は睡眠で過ごすといわれています。みなさんは、ぐっすり眠れていますか?今回は睡眠の質を上げるためのメソッドを、睡眠改善インストラクターであり、モデル・タレントの西谷綾子さんにお話を伺いました。


睡眠不足が及ぼす悪い影響とは
「『ストレスが溜まるから眠れない』と思っている方も多いかもしれませんが、実はその反対。睡眠の質が悪いと、小さなことにイライラしてしまったり、落ち込んだり、ネガティブ思考になるなど精神的に悪い影響を及ぼします。それは睡眠不足で脳機能が低下し、動物が『補食されるかもしれない』と危険性を感じながら敵を監視している緊張状態と、同じ状況になってしまうからなんです。不眠に悩む方は“心理的な悩み”と“生理的な睡眠”を一緒にせず、自分のライフスタイルに合わせた『睡眠の質を上げる技術』を身につけて、改善していってほしいなと思います。

睡眠が不足している状態は、精神的影響以外にも、

・集中力、判断力低下
・便秘
・肌荒れ
・太りやすくなる
など、さまざまな身体の不調につながります。

寝不足になると注意力も低下し、小さなミスを犯しがち。腸内環境が悪くなり、便秘や肌荒れなどの症状に出ることもあります。また、食欲を増進させるグレリンが増えて、食欲を抑えるレプチンが減少。太りやすくなる原因にもなります。

逆に睡眠の質が向上すれば、疲労回復、記憶の整理をしたり、ストレスを消去する働きをしてくれます。成長ホルモンが十分に分泌され、肌の再生を促し美肌へと導くなど、いいことづくし。とはいえ、忙しい現代人のライフスタイルでは、どうしても慢性的な睡眠不足に陥りがちです。睡眠の質を上げるためには受け身ではなく、積極的に睡眠改善のための時間をつくったり、行動してあげることが大切です。」


そもそも質のいい睡眠とは?
「“ぐっすり眠って朝スッキリ起きれること”が判断基準。たくさん眠ればよいという問題ではなく、質のいい眠りをするのに最も大切なのは、入眠からの3時間、いかに深く眠れるかということが重要です。よく『22時〜2時がゴールデンタイム』なんていわれていますが、眠る時間帯はそこまで気にしなくて大丈夫。それより最初の3時間でいかにスムーズに、深い睡眠に入るかということが大切です。

昨年私は出産をしたばかりなのですが、授乳で夜中に起きなければならない生活の中で、子どもを寝かしつけてからの3時間はなるべくしっかり自分も眠るように心がけています。もしどうしても忙しくて眠れなかった場合は、翌日は早めに眠りについたり、昼間に少し仮眠をとったりしながら調整しています。ダイエットと同じで、一日単位で考えず、一週間単位で調整しながら睡眠を確保するとよいです。」


快眠のためにするべきPOINT
「質のいい睡眠をとるには、夜だけでなく朝から日中の行動も意識することが大切です。最低限やってほしいことを、以下にまとめました。」

朝起きたら太陽の光を浴びる

朝、太陽の光を浴びることで、体内時計を整えます。人間の体は24.2時間で動いているといわれているので、そのズレを正すためにも日光浴をしてリセットしましょう。また、脳に光が届いてから14〜16時間後に眠りのホルモン「メラトニン」が分泌されるため、夜に眠くなるリズムが整いやすくなります。
窓から1m以内の場所で5分ほどメールチェックをしたりコーヒーを飲んだりしながら過ごすなど、いつもしている習慣とセットにすると時間短縮にもなります。

夕方は眠らない
起床から11時間後は深部体温が一番高い状態といわれています。夜は逆に深部体温が下がることで眠りに入りやすくなるんです。夕方に眠ってしまうとその時間の深部体温が上がりにくくなり、夜との深部体温の落差が生まれにくくなってしまうため、眠りが浅くなってしまうことに。起床から11時間後は運動をするなど、深部体温を上げる行動をするとよいです。

眠りにつく1時間半前に入浴する
眠る前に急激に深部体温を下げることで、眠りに入りやすくなります。入浴して深部体温を急激に上昇させることで、1時間半後、ちょうど眠る前に低下してくれるので、眠気を強めてくれます。

夜はリラックスして副交感神経を優位に
交感神経より副交感神経が優位になることで、深い眠りに入りやすくなります。そのためには心身ともにリラックスさせることが大切。スマホやPC、テレビなどを眠る前に使っていると、発せられる光によって脳が覚醒してしまいます。眠る前はなるべく避けましょう。蛍光灯の光も脳に刺激を与えてしまうので、夜は部屋を暗くして、間接照明は暖色系にして過ごすと◎。

ベッドでは眠ること以外をしない
脳は、場所とそこでした行為をセットで記憶します。ベッドで本を読んだり、スマホをいじったりすると、脳がその行動を記憶してあらかじめ準備をして臨んでしまいます。睡眠に関係ない脳の部位を働かせてしまうと、睡眠の質が悪くなるので気をつけて!


眠る前のアロマが快眠に有効
「香りは眠りの質を上げるのに効果的です。アロマの香りは心身の緊張をほぐしてリラックスした状態に導いてくれるので、快眠ツールとしてぜひ活用してください。また、アロマによってぐっすり眠る体験をすることで、脳が『眠り』と『香り』をセットで記憶してくれるんです。みなさんもふと懐かしい香りがしてそれにまつわる昔の出来事を思い出したりしませんか?それと同じで嗅覚は五感の中でも一番記憶とつながっています。いわゆる“入眠儀式”として習慣化することで、より眠りに入りやすくなります。

【眠りにおすすめのアロマ】
アロマの中でも、血圧を低下させて副交感神経を優位にさせるといわれる『リナロール』という成分が含まれているものがおすすめ。 種類としてはラベンダーやベルガモット、フランキンセンス、サンダルウッドなどが代表的。

起床後にリフレッシュしたい時は、レモンやローズマリーシネロール、グレープフルーツ、ペパーミントなどがおすすめです。

「そんな風に香りの成分によって使い分けると良いですが、基本的には“いい香り”と思う香りが自分の身体が求めている香りなので、ご自身の気分で選んでみてください。」


アロマを手軽に取り入れる方法は?
「ディフューザーを使ってもいいですが、コットンやティッシュにしみこませて眠る前に嗅いだり、バスオイルなどを使って入浴時間に香りを楽しむのもおすすめです。精油は直接肌につけられないものが多いので、洗面器などにお湯を張り、アロマオイルを数滴垂らして浴室の中に香りを漂わせても。枕にアロマスプレーをするのも手軽ですね。 きつい香りは眠りを妨げる可能性があるので、避けた方がよいです。 気をつけたいことは、アロマは成分を呼吸によって体内に取り込んで、血液にのせて全身に運ぶことで作用してくれるんです。香りを嗅いでも呼吸が浅いままでは体内に取り込めず、効果が半減してしまいます。深呼吸とともにアロマを楽しんでください。」


睡眠を妨げる意外なものとは?
「睡眠改善のためにあらゆる対策をしていても、思わぬところに睡眠を妨げる要因があったりします。 枕のまわりにスマホや本、リモコンなど物を置いたりしていませんか? 何か物があることで無意識にまわりに注意を払っていて、眠りが浅くなったり、途中で目が覚めやすくなります。私もアラーム代わりにしているスマホは、サイドテーブルに置いたり、床に置いたりしています。

また、歯ぎしりやいびきも眠りの質を下げてしまいます。眠っている時の歯ぎしりは、起きているときにぐっと歯を噛み締めた時の2〜10倍の負荷がかかっているとわいれています。カフェインの摂り過ぎやPC作業などで肩に力が入りすぎている人は歯ぎしりをしやすくなるので、普段から気をつけると良いです。」


いかがだったでしょうか。
睡眠が大切だということがわかっていても、つい睡眠時間を削ってしまうことってありますよね。キレイになるためにも、パフォーマンスを向上させるためにも、質のいい睡眠はとても大切です。
「どうしても眠れない!」という時は、「焦ったりせず、なぜ眠れないのかを分析するとよいですよ」と西谷さん。
考え事をしていたり、脳が興奮していると感じたら、耳より上の頭を氷枕で冷やしたり、交感神経が働いていると感じたら、深呼吸しながらアロマの香りを嗅いでみたりしてみてください。睡眠メソッドをちゃんと知っていれば、不安にならずに安心して眠りにつけますね。 自分のライフスタイルに合わせて、実践してみてください。


西谷 綾子(にしたに・あやこ)
ayako.nishitani



モデル・タレント。1986年4月4日生まれ。鳥取県生まれ。小学校3年生からバスケットボールをはじめ高校時代にインターハイ・ウィンターカップ3年連続出場。ランニング雑誌の表紙を務めたことがきっかけとなり、本格的にランを開始。2016年の東京マラソンでは3時間1分32秒の自己ベストを記録。芸能界ランナーの中でもトップクラスの実力を持つ。睡眠がパフォーマンス向上、夢の実現に欠かせないと実感し、睡眠改善インストラクターの資格を取得。そのほかジュニアアスリートフードマイスター(野菜ソムリエ)の資格もするなど、心身の健康についてのアドバイスも行っている。

Text by Sonomi Takeo