2023/07/12

INTERVIEW

【湘南PEOPLE】伊勢出身ヨガインストラクター・松原麻衣さんインタビュー|内側を整えたら、素敵な人としか出会わなくなりました

今回インタビューしたのは、鎌倉在住のヨガインストラクター・松原麻衣さん。鎌倉へ移住したことでマインドフルな毎日に。そこで起きた変化とは?

――もともとヨガには興味があったんですか?
「それが全然(笑)!それまで、ハワイ旅行をしたときにモーニングヨガを体験したことがあるくらいで、まったく興味ありませんでした。そのあとも、友人が東京の神宮球場で行われる無料のヨガイベントに誘ってくれたことがあったのですが、それも興味ないからと断っていたくらいで。
でもその一年後、『ヨガ』という言葉がインスピレーションで急に降りてきたんです。それでどこかで体験できないかとネットで調べていたら、友人が誘ってくれた同じイベントがちょうどその年も開催されると知って。実際に参加してみたら、ヨガがもたらす素晴らしさに感動してしまいました。
言葉で表現するのが難しいんですけど、『これは私の人生に必要なものだ』と直感で思ったんです。シャバーサナをしていると都会のど真ん中にいるのに『ここはどこかの森の中?』と錯覚するほどの心地よい感覚に包まれて。その3カ月後に、ヨガティーチャーの資格をとりにいきました。」

――いきなり資格を取りにいったんですね(笑)。
「そうなんです。普通はまずヨガスタジオに通いますよね(笑)。ただ私、毎週習い事に通うとか限りなくできない性格で…。ちょうど欲しいブランドバッグがあって貯めていたお金と、ヨガスクールの受講料がほとんど同じ価格だったので、バッグを我慢してスクール代に充てました。そこそこ高い金額はかかったのですが、ヨガは一生できるものだし、私の人生に絶対に必要だと確信があったので申し込みするのに躊躇する気持ちはなかったです。
参加した神宮球場のヨガイベントでインストラクターを務めていた先生が卒業したスクールで資格を取得することにしたのですが、スクールがたまたま家から自転車で通える距離だったのも決め手です。何より説明会に行ってみたらスタジオの雰囲気も講師の方の雰囲気もとても素敵で。引き寄せのようなものも感じました。」

――そこからヨガインストラクターへの道に?
「はい。卒業直前、自分が先生をやるかどうかは迷っていたのですが、先ほどお話した神宮球場でインストラクターを務めていた先生がディレクションするヨガスタジオが府中にオープンするタイミングで、スクールの先生が『ここの府中のスタジオは、麻衣さんに合う気がする!』と声をかけていただいて。
当時東京でOLとしてまだ働いていたのもあり自分自身の心身が疲れていたので、先生をやるとしても東京23区以外がいいな……とぼんやり思っていたんです。都内でも落ち着いている府中という場所にも惹かれ、『ぜひ私にできるならやらせていただきたい!』とお返事しました。1週間後には面接して、平日は会社員だったので日曜日だけ働かせていただくことになりました。」

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葉山で開催したビーチヨガ。ヨガは今の麻衣さんのライフスタイルに欠かせないものに

――会社員と両立されていたんですね。
「はい。平日は会社員、週末はヨガといった形でしばらく続けていて。2年間くらいは府中のスタジオで働いていたのですが、残念ながらクローズしてしまったので、その後は千駄ヶ谷にある別のヨガスタジオで講師をやらせていただいていました。
でも、千駄ヶ谷のスタジオもとても気がいい場所で気に入っていたのですが、ヨガや瞑想を続けるうちに自分の内側で何かが変わってきたみたいで、大好きな場所だったのに毎週行くのが辛くなってきたんです。コロナの影響もあって価値観が変わってきたのもあると思います。」

――何が辛かったんでしょうか。
「自分ではヨガや瞑想の勉強もしていたし、ウェルネスな生活をしていたつもりだったのですが、本当の意味での“セルフケア”ができていなかったのだと思います。エビデンス的に頑張ってしまっていたというか。本来は自分の内側の声に耳を傾けながら心もカラダも労るべきなのだと思いますが、知識だけが膨大になってしまって、心の声を無視してケアしていたような気もします。」

――情報過多の今、同じような状態の人は多いかもしれないですね。
「そう思います。私は三重県の伊勢出身で、就職を機に上京したんですが、東京は外側に楽しいことがありすぎて、自分と向き合う時間をしっかりとれていなかったように感じます。友達とご飯を食べに行って、ショッピングにも行って、仕事もバリバリして、遊びも全力で…。東京へ来て毎日がとても楽しかったし、刺激的でした。でも本当の意味で休息していなかった。したいことをして満たされているはずなのに常に疲れているような…。
自分では気づかないフリをずっとしていたのですが、コロナの影響で時間ができて、ある時ふと、自宅の部屋の中で『ここは私がいるべき場所なのだろうか』と思った瞬間があったんです。部屋をぐるっと一周してみたら、『あ、違う、ここじゃない』という声が聞こえたんです。それでそのあとすぐ、鎌倉に引っ越しました。」

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東京で暮らしていた頃の麻衣さん。刺激が多い都会で、仕事も遊びも全力だった頃

――行動力がありますね!
「決めたら早いほうです(笑)。それに、どんな環境に自分を置いて、どんなふうに生きたいかというのは人それぞれだし、自分で選べるはず。それまでヨガの先生といえば、どこかのヨガスタジオに属するのが普通だと思っていたし、そのほうが安定はすると思います。でも、それってどこか私らしくないというか。もっと自由に、心とカラダの声を聞きながら選べる道を選びたいと思いました。とはいっても今まで慣れ親しんでいた場所を手放すのは正直、とても勇気がいりました。でも、今この瞬間動かないと自分自身がダメになる!という気持ちのほうが大きくて、思い切ってスタジオも辞めて、都内のおうちも手放しました。」

――なぜ鎌倉だったんですか?
「葉山に住んでいる友達がいて、たまに遊びにいっていたんです。それでなんとなく湘南のほうがいいなと思って探していたのですが、葉山はあまりいいと思える物件が見つからなかったのと、東京を離れても都内の仕事も続けたかったので、であれば電車で通いやすい鎌倉で探そうと思って探していたらすぐにいい物件が見つかったので、引っ越しました。住んでみたら本当に心地よくて。思い切って引っ越してよかったと思っています。」

――麻衣さんにとって鎌倉の魅力ってなんでしょう?
「まず、自然豊かで海も山もあるところ。ビーチまで頻繁に行かずとも、近くに自然があるだけで見えない空気感ってあるじゃないですか。穏やかに流れるゆるっとした空気感が、地元の伊勢ととても似ているんです。ふらっと行きたいときにいつでも海に行ける距離感に住んでいるというのは、幸せだなと感じます。
神社仏閣が多いところも地元と似ています。鎌倉は戦いが多くあったし、悲しい歴史もあるけれど、昔から神社仏閣があることで多くの人が祈る場所でもあります。人の想いがその土地のエネルギーをつくっていると思っているので、そういった意味で鎌倉はパワースポットなんだと思います。だから自分にとっても合っているんです。」

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ヨガクラスを不定期で担当している、鎌倉・長谷にある複合施設「WITH Kamakura」にて。天気がいい日は、縁側や外の芝生でくつろげる

――鎌倉へ来てから心身の変化はありましたか?
「すごくありました! 鎌倉はいるだけでやわらかい気持ちになり、心がリセットできる気がします。東京に住んでいた10年間は目の前のことに精一杯で、『目標に向かって頑張ること』に重きを置いていて、心も体もおきざりにしていたし、そうしなきゃいけないと思い込んでいました。でもその経験があったからこそ、今の状態がベストだと思えるので東京にいた時間も有意義だったと思っています。」

――がむしゃらな時期があったからこそ、今があると。
「はい。そんな時期があったからこそ、今の穏やかな時間や生活の心地よさを感じやすいのだと思います。思い返せば、伊勢にいたときは自然にマインドフルネスな日常を送っていたんです。刺激も少なく、時間だけは有り余っていて、すぐそばに海や山、川があったので意図せず気づけばぼーっとしていました。
それって今思うととてもマインドフルネスな時間。大学は京都の学校だったのですが、そのときも鴨川沿いでよくぼーっとしていました。そして、その頃はいわゆる引き寄せの法則じゃないですが、思ったことが実現しやすかったように思います。鎌倉に移住してその感覚を取り戻せた気がします。」

現在、麻衣さんはフリーランスのヨガインストラクターとして活動。企業の社員にヨガを教えたり、イベントの講師をしたり、湘南でイベントをしたりと、さまざまな場所、形でヨガの魅力を提供している。
「自分のペースで仕事をする」ことが実現できた鎌倉では、どんなライフスタイルを送っているのだろうか。

――毎日決めているルーティンはありますか?
「朝はお部屋に祀っている神棚の水を変えて、手を合わせてお祈りをしています。実家では両親がやってくれていたのですが、ひとり暮らしをしはじめてからはできていなかったんです。鎌倉に来てから、毎朝の習慣となりました。
東京では常に時間に追われている感覚だったのですが、鎌倉に来てからひとりの時間が増えたのでこういった丁寧な生活を心がけています。実家でも使っている棕櫚箒で掃除をしたり、雑巾で床を拭いたりしています。海が近いので家に砂が入ってくるのが日常茶飯事なのですが、箒や雑巾で掃除をすることは、実はとても理にかなっているんです。私もできるだけ、そういった日常を大切にしています。あとは一日一回、お香など香りのものを焚いています。そのほかもいろいろ習慣があるのですが、アーユルヴェーダのディナチャリアの思想をもとに、ルーティンを決めています。」

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クリスタルや、部屋で焚いているセージなど。おうちをととのえてくれる、大切なツール

――ディナチャリアとは?
「ディナは『一日』、チャリアは『行動』という意味で、この2つを組み合わせたディナチャリアは『一日の理想的な過ごし方を日々繰り返して行う』ということ、つまり日課を意味しています。毎日取り入れていくことで、自然に合わせた暮らしができるようになり、本来の自分の状態へとととのえ、生活力を向上していくことにつながります。」

――素敵な考え方ですね。麻衣さんのディナチャリアはどんな過ごし方なんですか?
「私がリストにしているのは、鉄瓶で沸かした白湯を飲む、鼻うがい、オイルプディング、神棚の水を変える、トイレの掃除をする、丁寧なスキンケアをする、という6つの項目です。でも全部やるということではなく、できるものをすればいいと思っています。どれか一つでもやるということを決めています。」

――SNSの投稿などを拝見していると、食事にもとても気をつかっていらっしゃいますよね。何か気をつけていることはありますか?
「自分の体が何を求めているのか、声を聞くようにしています。頭で考えてNGを出すのではなく、自分の体を観察しているようなイメージです。基本的にはお米中心の食事のことが多いですね。おそらく私は、小麦粉はあまり体に合わないんです。でも、食べたいと思ったら食べますし、『ダメをつくらない』ことがモットーです。」

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体の声を聞きながら、食べたいものを、食べたい時にいただく。なるべく自炊を心がけている

――食事は以前から気を使っていたんですか?
「昔から、母が冷凍食品などはほぼ使わずいつも手作りのご飯を作ってくれていたり、家庭科の教諭である親戚に『今食べているものが10年後の体をつくるんだよ』と口酸っぱく言われて育ちました。また、子どもの頃は嗜好的にアイスクリームや生クリーム、あんこやパフェなどが食べられなかったのですが、大学で一人暮らしを始めたことをきっかけに、全部食べられるようになってしまい、食生活が一気に乱れたんです。そこから10kgも太ってしまったので、『これはまずい!』と思ってそのあと会社員時代は自炊をしながら気をつけていたのですが、大学生のときからちょうど10年たった時、体調を崩してしまったんです。日々口にするものの大切さを身をもって痛感しました。それ以来はより、無理をしない程度にですが、10年後の自分のためにと体に合った食べ物をいただくように意識しています。」

――心の健康にはどう向き合っていますか? ストレスを感じたときの対処法などもあれば教えてください!
「心理学においてコーピングリストというものがあって、ストレスを感じたときの対処や工夫をリスト化しています。なるべくすぐにできるものがよくて、白湯を丁寧に飲むとかそういった簡単なことでいいんです。本当は100個くらい作るらしいのですが、個人的には100個もいらないんじゃないかなと思っていて、自分なりに書き出して、そのときできるものを実践しています。
私の場合はノートを持ってカフェへ行ったり、スマホを持たずに海へ行ってぼーっとしたり。とりあえずひとりで立ち止まる時間をつくっています。
東京では誘われたらごはんも行っていたし、ひとりの時間があまりありませんでした。鎌倉ではいったんひとりになって充電したかったので、移住してから一年間くらいはほとんど友達を作らなかったんですよ(笑)。でも、自分をととのえてからコミュニティを広げていったら、素敵だなと思う人としか出会わなくなりました。自分の足で立ち、内面をととのえるだけで世界は変わるんだと体験を持って知りました。」

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鎌倉・材木座にあるコーヒーショップ「Calender」。コーヒーが美味しいのはもちろん、ふらっと立ち寄って何気ない会話を楽しめる、心地よい時間を過ごせる場所

――まさに、内面が現実世界を創り出すということですね。これからはどんな人生を歩んでいきたいですか?
「まずは軸として、“自分がありたい姿”の状態で生きていくこと。これが前提です。とにかく妥協しない。自分で選択すること。これは一生大事にしていきたいです。
そしてこの先は地元の伊勢にも拠点がほしいと思っています。自分のルーツである伊勢で、私が学んできたヨガやアーユルヴェーダを日常に落とし込めるようなメソッドを伝えていきたい。そして、この世の中で生きやすい人をもっと増やしていきたい。本当は軽やかに生きていきたいけど、なかなか一歩を踏み出せないとか、自分の枠を決めてしまっていたり、生きづらいと感じている人がたくさんいると思います。自分ができることで、そういった人たちをサポートしたり、貢献できたらうれしいです。」

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大好きな地元の伊勢にて。今でも帰れるときは帰って、伊勢の空気を吸うことが元気の源

可愛らしいビジュアルの中に潜んでいる、熱いパッションを感じる言葉が並ぶ。麻衣さんが目指しているのはただ「ヨガを伝える」ではなく、もっと本質的なこと。内側から満たされ、輝くことでもっとハッピーな世の中になったならば。その想いはビープルも同じ。
さまざまなツールで、生きやすく過ごせる人が増えますように。


松原麻衣さんInstagram
@mai021988

Text by Sonomi Takeo

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