2023/06/23

INTERVIEW

「サンシャインジュース」コウ ノリさんインタビュー|奇跡の循環プロジェクトとは?

「同じモノゴトでも、身体やマインドの状態がいいと、良く感じられるもの。いい状態の人が一人でも増えれば、良い社会に繋がると思うんです」

野菜や果物の栄養分をダイレクトに身体へ届けるコールドプレスジュースを作り続けることで、いい状態の人を増やして良い社会に繋げる、つまりは世界平和を願う、「サンシャインジュース」代表・コウ ノリさんへのインタビュー。

「海が大好き!」「自然を感じたい!」などとワクワクするシーズンがやってきたと同時に、その自然が直面している問題を目の当たりにし、環境を守るためにできることが何かを考えている方も多いはず。
そんなことから、ごみ問題にアクションしている方にお話を聞いてみようと、ノリさんにインタビュー依頼をしました。
彼は、ジュースを作るたびに出る“搾りかす”をどうにかできないかと、「コスミックコンポスト」を実現し、今や搾りかすを“ごみ”にすることなく生かし、土に還った“かす”によって再び野菜や果物を生み出し、ジュースを作る…そんな循環を行なっている方です。


色鮮やか!完全無添加で100%自然由来・100%植物由来をコンセプトにしたコールドプレスジュース

ノリさん:「取材をしてもらうのはありがたい話だけど、大前提、僕はジュース屋さん。『なんでジュース屋をやっているんですか?』って言われたら、多くの人が自然のエネルギーで健康になってもらいたいから。皆さんにちゃんと食に意識を向けてもらいたい。全てはそこに向かうためにやっていることで、コンポストもそうなんですよね」

――そもそもなぜ健康になってもらいたいという考えに至ったのでしょうか。
「持久スポーツが好きで、食べるものによって体調も変わればパフォーマンスも変わるっていうことが分かっていました。でも本当はスポーツをしてようがしてなかろうが、関係ないと思うんですよね。やっぱり食べ物で世界が変わるんですよ。
自分の体の調子がいいと、いい世界が見える。じゃぁどんな食べ物がいいかって言ったら、“自然のもの”が一番だと思う。パッと見たときに全ての原材料がわかり、もっと言えばそれが誰によって、どんな場所で作られたのか見えることが、一番素晴らしい食だと思っています。僕の場合、そのフォーマットがジュースだったということ」

――でもそのジュースを作り、多くの方に届けることによって、毎日ごみ(搾りかす)が出るんですよね。
「搾りかすが出るからこそのジュースなんですよね。コーヒーやビールだってそう。人間がそのものを楽しむためには、どうしてもごみが出ちゃう。それを“しょうがない”って言っていいかはわからないけど、ある程度はしょうがない。でもそのまま廃棄するんじゃなくて、何か他にまだ使い道があるんじゃないかなって思って、色々やってみたんですよ。クッキーやベーグル、グラノーラのような食べ物にすることは分かりやすい。でも結局植物は人間や地球と同じように約70%が水で、その中に栄養が詰まっているん。その水分っていうのが、僕が作っているジュースだから、必ずしも再利用の方法が食べ物でなくてもいいのかな?と思ったんです」



――もっとスケールを大きく繋がり合いたいということ?
「搾りかすで食べ物を作ればホールフーズの考え方で、『循環してていいね』って言われることもあります、でもそれって人間社会の中で循環していること。でも、これが微力でも植物や地球に対してのギフトになったら、その方が面白いなと思いました。それで『コンポストだ!』って思ったんですよね。
10代の頃、ハワイで会ったヒッピーおじいちゃんが、生ごみを土とぐちゃぐちゃに混ぜてたんですよ。『何してるの?』って聞いたら『土を豊かにしているんだ』って。結構な衝撃を受けたんですよね。それがずーっと頭の隅にあったというか、“種”が残っていたんですよ。後々になって、『あれはコンポストだったんだ!』って急に思い出して、いろいろ調べました」

――コンポスト実現に向けて、どのように進めていったのですか?
「調べたら、橋本力男さんという方が三重県で『堆肥育土研究所』というのをやっていて、電話して訪ねました。彼は農家さんでもあり、生ごみの堆肥化にずっと取り組んで、土を作ることにフォーカスしている土づくりの先生。橋本さんにいろいろと教わって、多くを学ばせてもらいました。そして青梅の『Ome Farm』でも橋本さんの元で学んだ方が同じようにコンポストに取り組んでいて素晴らしい堆肥化のシステムがあったんですよ。さらに千葉の一宮で『THE Farmer’s』という生産者の皆さんも土づくりに興味をもってくれて一緒にコンポストに取り組んでくれて、彼らも橋本さんのところで学んでくれたり、葉山の『BASSED FARM』のリー君も同じく生ごみから土を作ることに取り組んでくれて、その近郊3生産者の協力と橋本式生ごみ堆肥化システム
で、サンシャインジュース店舗の全てのジュース搾りかすを廃棄せずに土にすることが実現できました」


実際にコンポスト作業をするノリさん(左)

――搾りかすは毎日3軒のうちのどこかの農場に運んでいるのですか?
「毎日ではないです。例えば『THE Farmer’s』は本業がサーフボードのリペアなので修理したボードを東京に納品に来る日が決まっていて毎週帰りに空っぽになった車に搾りかすを乗せて持っていってくれます。Ome Farmも恵比寿の近くに来てくれる日があって帰りに積んで帰ってくれる。3軒で全て回収してもらっています、ありがたいです。このコンポストプロジェクトはこうやって協力してくれる、意識の高い生産者の皆さんがいるからこそなりたつ。彼らが土からこだわって作り出す野菜や果物は本当にクオリティが高くて心からリスペクトしています」

――毎日出る全ての搾りかすを?
「そう、全て!生ごみゼロ!もう2年くらいゼロです!」

――気持ち良いですね。
「気持ち良いです。でも『Ome Farm』の太田さんがよく言う表現で、『第一コーナー、第二コーナー、第三コーナー…ってあって、これが全部繋がることがミラクル』なんですよね。もちろんゴミを少なくしたかったけど、ゴミをゼロにしたいからコンポストをしているわけでもないんです。僕らは産廃業者じゃないから。
やっぱりごみが植物に生まれ変わって、またジュース屋さんに戻ってきてくれてジュースになるところまで繋がりがわかることがすごい。それを僕らが飲んでエネルギーをうけとって活動していく。これは結構奇跡だと思います」

――ノリさんは、全ての繋がりを武器に、様々な場で発信をしている印象です。発信するのは何故なのでしょう。
「発信、できていますかね(笑)?
例えば、spotifyで発信している、様々な素敵なゲストを迎えて話を聞かせてもらうPodcast, "Juicy Talk"も自分が聞きたいからやってるんですよね。素敵な思いをもっているゲストの皆さんから話を聞くと、ジュースを飲んだときみたいな感覚になれる。体とマインドがいい状態になれるというか。それが少しでも多くの方に伝わって、感じてもらえたらいいです。

なんだか当たり前のことが当たり前じゃなくなりすぎているように感じます。本来は食べ物の生産背景は全て繋がっているべきなのに、どこかでブラックボックスに入っちゃって…不透明な世の中。でもそれをなくして、全部見せて出来上がったのがこの土で、このジュースですって。だから発信するのは、自分をクリアにして『どうですか?』って言っている感覚です」


これが“地球食い”!!

――恵比寿店を拠点にしながら、イベントで日本各地で出店することも多いですよね?
「そうですね。出店もいろいろなカタチがありますが、メインでやりたいのは、一番力強い状態で野菜や果物のエネルギーを届けること。
一番おいしいミカンの食べ方、知ってます?ミカンの木からミカンを取らないで、そのまま皮をむいてパクッと食べるんですよ。自分が木に近づいてそのまま食べる、それが一番うまい!!“地球食い”っていうんですけどね。
畑に行ったら僕は必ず地球食いをやるんです。以前雲仙でワークショップをしたとき、3歳くらいの普段はあまり野菜を食べない子に『一緒に地球食いやろうよ』って言うと、楽しそうに食べながら『なんか美味しい!』って。そうすると、その子にとって畑の野菜が美味しいものになるんですよね。あとはその場でジュースを作って飲んでもらえば、最高です」


日本全国、ジュース作りをしに出向くノリさん

――嬉しいですね。

「本当に。これがサンシャインジュースが届けたいバリューです。できるだけ植物の生きている状態の栄養を摂って、それを体感してもらい健康になって、植物と繋がり、つまりは地球と、環境と繋がる。人間が手を加えすぎないでできるだけ自然と繋がることができたらいいなと思います。そんなことをジュースを飲むというシンプルすぎるくらいシンプルな行為を通して体感していただけたら様々なことに対しての意識が変わるきっかけになるんじゃないかと思います。そんなパワフルなクオリティのジュース、地球食いクオリティに近いジュースを作るためには、やっぱり僕が植物に近づいていきたいなって思います」


話題の移動式店舗「SUNSHINE JUICE WHEELS」

ノリさんがやっていることはいたってシンプル。
環境問題にどうアクションしていくか…
自然や地球と向き合って、何かできることはないか…
などと考えを巡らせるのも重要だけど、
私たちは自然の一部なのだから、植物を思い切り体に摂り入れることが健康への一番の近道だし、そんな風にエネルギーをくれる植物たちが喜んでくれる環境を作ろうよ、ということ。
近年は、最もクリーンな形の燃料である植物性の使用済み調理油で動く、通称「天ぷらカー」を使った移動式店舗「SUNSHINE JUICE WHEELS」で日本各地を旅しながらジュースを販売しているそうで、これも、コンポストと想いは同じ。

ビープルファンの皆さん、是非全身でサンシャインジュースを味わってみてください。世界中の人がそうやってジュースを飲んだなら、本当に世界は平和に近づいていくはず。
ノリさんの発信は、SNSでご覧いただけますよ。


コウ ノリ @nori_kooo
「サンシャインジュース」代表。アメリカ、日本、台湾での生活を経て、2014年、東京・恵比寿に日本初のコールドプレスジュース専門店「サンシャインジュース」をオープン。「生きた自然のエネルギーを味わってほしい」と100%自然由来・植物由来にこだわり、全国の生産者から直接仕入れる野菜で作ったジュースを販売する。
2022年8月にはオフグリッド車での移動式コンセプトショップ「SUNSHINE JUICE WHEELS」もスタート。#stayjuicyを合言葉に、各地で自然環境・エネルギー・食・農・健康など幅広い分野の情報を発信する。

Text by 関 早保子