2023/07/25

ORGANIC DICTIONARY

日本人のほとんどが知らない!?「アニマルウェルフェア」とは

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「アニマルウェルフェア」という言葉をご存知でしょうか。
なぜ今アニマルウェルフェアが求められているのか?その意味と実情を解説します。



アニマルウェルフェアって?
欧米を中心に広がり始めているこの言葉は、動物を「感受性のある存在」と捉え、家畜にとってストレスや苦痛の少ない飼育環境を目指す考え方のこと。誕生から死を迎えるまでの間、ストレスをできる限り少なく、行動要求が満たされた健康的な暮らしができる飼育方法をめざす、畜産の在り方です。

「動物の権利」を意味する「アニマルライツ」とも似ていますが、アニマルウェルフェアは家畜利用を認め、アニマルライツは家畜利用を否定する、という違いがあります。
また、「動物愛護」とも異なり、人間の感情も直接関係ありません。

アニマルウェルフェアの議論は、ヨーロッパが発祥とされています。1960年代にはアニマルウェルフェアの基本原則である「五つの自由」がイギリスで確立され、90年代になると欧州連合(EU)を中心にアニマルウェルフェアの基準が法的に定められ、特に各国の畜産生産者に改善を求めてきました。

動物がどういう状態か、何をすれば良好な状態になるかは、動物科学や家畜行動学などの科学によって評価されます。現在は世界動物保健機関(WOAH)が、世界中の科学者を集めてアニマルフェアの基準を作っています。

アニマルウェルフェアの改善は、SDGsの実現とも深い関わりがあります。
前述した、アニマルウェルフェアの「五つの自由」とは、
・空腹と渇きからの自由
・不快からの自由
・痛み・損傷・疾病からの自由
・恐怖と苦悩からの自由
・正常行動発言の自由
です。

動物たちが良好な状態へと改善することで、畜産経営の持続可能性を高めて、そこで働く人の環境を改善し、質のいい畜産物の供給へとつながります。
SDGsの観点でいえば、「飢餓をゼロに」「働きがいも経済成長も」「つくる責任、つかう責任」、「気候変動に具体的な対策を」などの実現にも関わってきます。


日本は世界に比べて遅れている現状とは
日本はアニマルウェルフェアの改善が遅れているといわれています。まずあまり認知されておらず、アニマルウェルフェア認証を受けた食品も少なく、法的な規制もまだ十分でないのが実情。
農林水産省によると、日本では採卵鶏の飼養携帯のうち94.1%がケージ飼い(バタリーケージ・エンリッチドケージ)。一方、フランスのケージ飼いの割合は47%、ドイツは5%。日本の畜産では、上記の「五つの自由」が満たされていないケースが多いよう。

アニマルウェルウェアの改善を行うことにより、ストレスなく動物が育つため色の安全性にもつながり、畜産農家にもやさしい飼育方法にもなります。
欧米では動物保護団体などが積極的に「アニマルウェルフェア」認証制度を創設。東アジアの諸国でも徐々に浸透してきており、法的な枠組みづくりが進んでいるといわれています。
現在、農林水産省では「アニマルウェルフェアの考え方」をまとめ、意見交換会を開くなどその取り組みを広める試みを進めているそうだが、欧米に比べて遅れをとっているのはたしか。


この考え方、価値観を広めていくには、人も動物も、よりよい環境で心地よく生きていくために、一人ひとりが「アニマルウェルフェア」を意識して生活することが大切です。
あなたも今日から、「アニマルウェルフェアライフ」をはじめてみませんか?





<参考文献>
農林水産省「アニマルウェルフェア」について
アニマルウェルフェア畜産協会

Text by Sonomi Takeo