2021/12/23

INTERVIEW

本来、月経はコントロールできるもの|布ナプキンをプロデュースする相澤さきさんインタビュー

今年の春、草木染めの布ナプキンブランドを立ち上げた相澤さきさんにインタビュー。
今注目されている布ナプキンのメリットって? 


――さきさんは今布ナプキンを製作されていますが、以前は全く違うお仕事だったんですよね?
「もともとアパレルブランドの『GAP』に勤めていて、接客を教えたりしていました。10年ほど勤めて、『OLD NAVY』というブランドへ異動になったのですが、すぐに日本から撤退してしまって。仕事に不満があったわけではないのですが、人生を見つめ直すのにいい機会かなと思い、何も先が決まってないまま辞めたんです。その頃ヨガのインストラクターの資格もとって、しばらくはヨガを教えることがライフワークになりました。GAPは一度辞めましたが、今は別の形で携わっています。」

――そこから布ナプキンを作り始めた経緯は?
「最初から布ナプキンを作りたいと思ったというよりは、ヨガを始めてしばらくした時、生理の経血を自分でコントロールできるようになっていたことに気づいたんです。いつの間にかトイレに行った時だけ経血を出せるようになっていて、夜寝ている時もナプキンに血がついていなかたり。かつて、昔の女性はそれをみんなできていたんですよね。でも現代人は生活の変化で体は退化し、ストレスや冷えなどが原因で子宮は冷え凝り固まり、経血は垂れ流し状態に。コントロールができなくなってしまっているんです。

自分ができるようになったのは、絶対にそうとも限らないのですが、『ヨガの恩恵かな?』と思いました。特に私が指導を受けていたヨガの先生は、『ハートオブヨガ』という呼吸に意識を向け続けるポーズを中心に教えていたのですが、呼吸をすることで全身の巡りがよくなり、体が温まります。そして何より下腹部付近を意識するようになる。人の体って意識を向けてあげるだけで、変化するものだと思っています。
ヨガをすれば必ず月経コントロールができるようになるとも思いませんし、個人差があると思います。でも『自分の体に意識を向けるようになる』ので、何かしらの変化はあるのではないでしょうか。そこで、『体を温める』って大事だなぁと思うようになって、最初は布ナプキンではなく電子レンジで温めることができる枕を作りたいと思い始めたんです。」

null
bloomoonの布ナプキン

――呼吸って本当に大切なんですね。
「ヨガを教えていても、呼吸法がしっかりできている人って、あまりいないように感じていました。呼吸ができていないと、しっかり内側から温まらないんですよ。」

――さきさんはその時も布ナプキンを使っていたんですか?
「実は、その時布ナプキンは使っていなくて、むしろ自分で作り始めてから使っています。布ナプキンを作り始めたきっかけは、GAPを辞めてからしばらくしたあと、『Leona(レオナ)』という海からインスパイアされたファッションブランドで出店のお手伝いしていたのですが、海沿いでよく出店をしていたんです。2021年の4月に沖縄の宮古島で出店が決まっていて、そこで『さきちゃんも出店したら?』と言ってもらえて。でももう冬も終わる時期だったし、温かい枕作ってもなぁと思って、それに合わせていつか作りたいと思っていた布ナプキンを作ることにしました。それが布ナプキンブランド『bloomoon(ブルームーン)』です。」

――どんな特徴があるんですか?
「すべてオーガニックコットンを使用しています。肌にもやさしいですが、やはり環境にも配慮したいと考えています。私は小さい頃から祖母が住んでいる伊豆下田にしょっちゅう遊びに行っていて、海を身近に感じて育ってきました。サーフィンも好きですし、拾ったシーグラスで雑貨を作ったりもしています。そんな慣れ親しんできた海を大切にしていきたいという気持ちから、着なくなったGAPの服などをスタッフから集めて親戚や子どもにあげたり、伊豆今井浜東急ホテルやカフェ、GAPの柏店などでシーグラスのワークショップをしながら子ども達に環境のことを簡単に話したりもしています。洗って繰り返し使える布ナプキン自体、ゴミが減るので環境にもいいですよね。紙ナプキン=汚物というイメージを植え付けられているかもしれませんが、布ナプキンはまったくにおわないし、キレイで真っ赤な神聖な血。毎度洗うという手間があるかもしれませんが、私はゴミになって『早く捨てなきゃ!』と思うより、お風呂などで洗うほうが気持ちも楽です。」

null
趣味のサーフィン

null
さきさんが拾ったお気に入りのシーグラスやシー玉。お皿やスマッジスティックは大好きな友人から購入したもの

null
GAP柏店にて開催したシーグラスのワークショップ


――さきさんの布ナプキンは草木染めなのも魅力的ですよね。
「ありがとうございます。布ナプキンは雑草や野草、樹木などから一つひとつ丁寧に手染めした草木染めというのも特徴です。最近では月桃やアボカド染め、玉ねぎ染めもしています。もちろん食材は捨てる部分を使います。」

――淡い色合いで、素敵ですね!
「そう言っていただけることが多くて嬉しいです。宮古島で出店した際、たまたま出会った子のポーチがとても可愛くて、聞いたらそれが草木染めだったんですよ。その草木染めをしている方を紹介してもらい、その方に今は染めてもらっています。自分が可愛いと思えるものを作りたかったので。パターン、裁断、縫製、草木染めなどたくさんの方に協力していただき形にしてもらっています。私一人では作りあげれなかったことなので、私に関わる全ての方へ感謝しています。」

他にも知人から、デザインしたものの事情により販売できなかったという手術着の生地の余りをもらった布ナプキンを作成したり(肌にあたる部分はオーガニックコットン)、様々なことにチャレンジしているさきさん。
しかし布ナプキンを販売とすると同時に、ヨガで教えていた教室は辞めてしまったという。

――ヨガの教室はどうして辞めてしまったんですか?
「コロナもあり、思うようにレッスンが2年弱できなくなり、それと同時にヨガは良いものだから人に伝えたい反面、生活のためにお金を稼ぐ=ヨガをメインの仕事としてお金を稼ぐことが自分の中で辛くなってしまって。ヨガのレッスンを減らし、お寺やプライベートレッスン、リトリートを開催しています。ヨガの哲学はとても素晴らしいものなのですが、それは布ナプキンを販売しながら教えることもできる。反対に、ヨガレッスンを開催した時は布ナプキンを伝えることもできるので、やれる時にやればいいかな、と今では思っています。今後は、伊豆下田の宿でも宿泊者向けにできたら、と考えています。」

――布ナプキンを販売してみて、どんな反響がありましたか?
「生理痛が和らいだという声をいただいたり、月経時だけでなくおりものシートを毎日使ってくれていた子がいたんですけど、生理になると薬を飲まずにはいられないほど頭痛や腹痛に悩んでいたのに、1カ月布ナプキンを続けたら、初めて薬を飲まずに過ごせたらしいんです。すごく嬉しかったし、そんなに変化があるものなのだと、改めて驚きました。布ナプキンは体を温めたり、肌にやさしいのでかぶれやニオイ・ムレがほとんどなくメリットがたくさんあると思いますが、先ほどお話したように、やっぱり布ナプキンに変えることで『体に意識を向ける』ので、それによる効果ってあるんじゃないかな、と思います。紙ナプキンだと気にならない経血の垂れ流しの状態を意識しやすくなるんです。」

――さきさんの布ナプキンはどこで手に入るんですか?
「今は住んでいる千葉と、行き来している伊豆下田の他、湘南など海沿いを中心に出店しています。伊豆下田では、白浜海岸近くのカフェ『IRIE coffee & sea』で、毎月fullmoon marketを開催しています。あとはオンラインでも販売しています。」


null
伊豆下田のサーフショップ&カフェ『IRIE coffee & sea』で、毎月fullmoon marketを開催

――先日、宮古島でリトリートも開催したとか。
「そうなんです。今年の12月に初めて宮古島でリトリートを開催しました。ずっと体験したかったビオスチーム体験やビーチヨガ、シュノーケリングなどをしたのですが、宮古島でリトリートがやりたいとはずっと思っていたので、実現できてすごく嬉しかった。口に出していると願いって叶うんだな、と思った出来事の一つです。
今回の宮古島で本当に確信に変わったのが、『誰かのためにというより、自分がやりたいことをやり、伝えたいことを伝えていく』ことが大事だということ。この時期までにこれを作りたいといろいろと調べていてもなかなか進まないことがあったんです。でも自分が心からやりたいことをやっていくほうがするするっとスムーズに物事が進んでいき、導かれていきました。自分がワクワクすることや、やりたいと思ったことをこれからも挑戦していきたいです。」

null
シュノーケリング@宮古島

null

2019年に行われた下田リトリートでのサーフィンレッスン

――今後、さきさんが目指していきたいことは?
「子どもがいるのですが、4月から伊豆の学校に入るため、下田に完全移住します。そこを拠点に、今後も湘南や宮古島、宮崎など海沿いを中心に出店やリトリートを開催していきたい。海沿いの街は移住者が多いのですが、移住した女性って、すごく芯が強くて環境や自分の体に対して意識が高い人が多いと感じています。布ナプキンに対しても興味を持ってくれる方がたくさんいる印象です。
いろんな場所に住む女性に布ナプキンを伝えていきながら、いつか子ども達がナプキンを紙か布か、自分の選択で選べるようになっていったらいいなと思っています。環境問題もそう。自分というより、子ども達が環境に悩まず豊かに暮らせる明るい未来を過ごせるように、少しずつ自分ができる範囲で、自分なりに伝えていきたい。来年もまた、下田や宮古島でリトリートを開催予定です。リトリートや出店だけじゃなく、いろんな方面からアプローチしていきたいと思っています。」


数年前までは布ナプキン使用者はごくわずかだった。しかし今はブランド数も増え、愛用者も続出中。それだけ恩恵を受けている人が多い証拠だろう。
ヨガや布ナプキンが必ずしも、その人の体にいいかどうかはわからない。
でも、自分自身の体の声を聞いてフォーカスすることはとても大事だ。
興味があるならばぜひ一度体験してみて、その変化を楽しんでみては?

Text by Sonomi Takeo