2021/02/24

INTERVIEW

私が追い求める道|モデル・起業家の吉川プリアンカさん流、「自分らしく生きる」秘訣とは

モデル活動をしながら、起業家・経営者として活躍している吉川プリアンカさん。“多様性”をテーマにしたCBDスキンケアプロダクトを展開しています。なぜ多様性という価値観を発信し始めたのか。その原点とは?この先に目指しているものとは?

インド人の父親と日本人の母を持つ吉川プリアンカさんは、16歳の頃より芸能界でモデルとしてキャリアをスタート。2016年度のミス・ワールドではミックスとして初めて日本代表として選出され、世界トップ20入りという快挙も成し遂げています。また、23歳という若さで起業し、CBDウェルネス&スキンケアブランド『MUKOOMI』を2020年の春にローンチ。起業家・経営者としても活躍しています。
次々と自身の夢を実現しているプリアンカさん。彼女のルーツから、現在の活動、思い描いている未来を聞いてみた。

——16歳の時にモデル活動を始めたそうですが、そのきっかけは?
「小学生の時にいじめられた経験があって、最初のきっかけは『有名になっていじめた人たちを見返したい!』という気持ちからでした。生まれは東京なのですが、幼少期はアメリカ、インドで過ごしたんです。小学校6年生の時に東京へ引っ越したんですが、そこで初めて、ミックスというだけで〝いじめられる〟という経験をしたんです。」

——モデルという道を選んだ理由は?
「芸能活動のきっかけはいじめではありましたが、『発信力がある人になりたい』という気持ちも強かったんです。芸能活動をしている方ってインパクトも信頼度も高い。でも私、歌がメチャクチャ下手なんですよ(笑)。だから歌手は自動的に却下!それでモデルのオーディションを受けて、事務所と契約しました。小学校でいじめられた経験もあったし、小さい頃は日本が嫌いだったので母から高校生になる時に『アメリカに移り住む?』という提案もされたんですが、アメリカにはミックスなんてたくさんいるし、モデルとして活動するなら日本で勝負したいと思い、あえて日本にとどまりました。」


〈右〉幼い頃のプリアンカさん。

——今でも日本は嫌いですか?
「いえ、むしろ愛国心は強いほうだと思います。日本人なのに『日本はつまらない』『日本は好きじゃない』みたいなことを言う人って結構いますよね。私はそれを聞いて、ちょっと違和感を感じてしまったんです。『日本にもいいところたくさんあるのに!』と思うようになって、自分に居場所がないと感じているなら、〝自分が居心地の良い場所をつくっていこう〟という意識に変わってきました。モデル活動をし始めた時にはそういう考え方でしたね。」

——10代の頃から大人な考え方ですね!
「やっぱりミックスということから、自分のアイデンティティーについて深く考える機会が多かったのは大きいですね。そのおかげで自問自答する癖が昔からあって、仕事でも恋愛でも、『なぜ自分はこう思っているのか』『なぜこれをやりたいと思っているのか』とどんどん深堀りしていくんです。そうすることで、本当の自分、自分が望んでいることが見えてくる。もちろん、失敗したり間違えたりすることもあるんですけど。」

——22歳でミス・ワールド大会に出場した理由は?
「スカウトがきっかけです。でも実は、ちょうどモデル事務所も辞めてなんにもしてない時だったんです。16歳から21歳まで続けていたのにオーディションも落ちてばっかりだったし、なかなか結果が出せずにいたので一度辞めてみようと半年間、貯金を切り崩しながら過ごしていました。とにかくその半年間は遊んで暮らしました(笑)。でも、やっぱり目的がなく過ごすのってつまらないんですよね。だからもう1回モデルとして頑張ろう、そのためにNYに行こう!と決心して、そんな時にたまたま行った東京ファッションウィークの会場でミス・ワールド事務局の方にスカウトされたんです。」

——覚悟を決めた瞬間にチャンスが巡ってきたんですね!
「本当にそうですね。それに父の祖国であるインドはミスコン大国で、とても価値のあるものとされているんです。ただの美女コンテストではなくって、女性のエンパワーを持つという意味もある。とにかくこれに賭けてみよう!と思って、2016年はずっとこの大会のためだけに生きていました。」



——大会では見事グランプリを獲得したわけですが、それまで努力もたくさんされたんじゃないでしょうか。
「体型管理はもちろんですが、何よりマインド設定に注力していました。これはどんなことにも言えるのですが、ミスコンは特にメンタルが勝負。その時は部屋中に自己実現のために、望んでいる未来=予祝を書いた貼り紙をしていました。あとは優勝スピーチを書いて、朝起きたらすぐに目に入るように天井に貼ったり。鏡の近くに『大丈夫だよ』と書いた紙を貼ったり…。」

——そういったアイデアは、何かを参考にしたんですか?
「たまたま観た映画『フラワーショウ!』で、主人公の女の子がお花の祭典に出る前に、冷蔵庫に優勝スピーチを貼っているシーンがあったんです。そこからヒントを得ました。あとはこれもたまたまなのですが、『心のブレーキの外し方』(石井裕之著/フォレスト出版)という本を知人に薦められて読んだんですけど、これもマインドを良い方向に変えるのに役立ちましたね。この本は顕在意識ではなく潜在意識の変え方が書いてあるんです。自分は“オーディションに落ちてしまう”といったようなネガティブな感情がパターン化されていたので、潜在意識を書き換えるアクションをしていくことで、徐々にポジティブ変換できたんだと思います。ほぼ初対面の方からおすすめされたので、今考えると不思議なタイミングですね。」

——なるほど。グランプリを穫った時の気持ちは?
「もちろん嬉しかったし、信じられないという気持ちでいっぱいでした。でも自分が描いていた理想が、『日本代表になる』までだったのが反省です。世界大会や任期中のことまで描けていなかったので、いわゆる“燃え尽き症候群”になってしまったんですよ。あと、これもいい経験になったんですが、人ってずっと120%フルMAXで生きるって難しいんですよね。どうしても燃料切れになってしまう。“普通より少しいい”を保つことが、目標に辿り着く秘訣なんだな、とその時学びました。なので、世界大会では本領発揮ができていなかったように感じます。」



——フルマラソンと少し似ているのかもしれないですね。
「そうですね。楽しようとしてもダメだし、頑張りすぎてもダメ。何事もバランスが大切ですよね。」

ミス・ワールド・ジャパンで、ミックスがグランプリを獲得したのは史上初。当時はニュースでも取り上げられ、話題となった。注目を浴びることになった反面、「“ハーフ”のグランプリ」とバッシングも受けてしまう。 しかし同時に、「励みになった」というメッセージもたくさん届いた。

「たとえばミックスの娘さんを持つお母さんから、『ミックスの方がこんな世界的なタイトルを穫れたというニュースを観て、希望が持てた』というメッセージをいただいたりもしました。そんな経験から、多様性をコアに発信していくことが自分の使命かもしれない、と思い始めました。バッシングもあったからこそ、多様性のニーズってまだまだあると感じたし、この価値観を広めていきたいという気持ちが強まりましたね。」

——その後は起業をされていますが、もともとビジネスには興味はあったんですか?
「はい。昔から25歳までには起業したい!と思っていました。思っていたというより、“決めていた”という言葉が近いかもしれません。事業内容こそ決まっていませんでしたが(笑)。」

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——それはなぜ?
「父親はお金を稼ぐことより、『好きなことをしたい』という夢を追う人だったんです。自営業だったのですが、お金に関しては親を頼れない、セーフティネットがない状況で。それゆえ高校生の頃から、『自分は自立しなければならない』という意識が強かったんです。物事って自分の中で決めてしまえば叶うと思っていて、起業もそのひとつでした。外見からか『お金持ちそう』と思われがちなのですが、今までの人生で、家がないこともあったくらいです(笑)。といっても友達の家に泊まらせてもらっていたので、外で寝泊まりしていたわけではないですが、ホームレス社長だったんですよ。」

——そんな時代があったんですね! 
「最初はすでにビジネスをしている方に声をかけて、その事業を大きくしていくということをしていました。徐々にうまくいって、安定もしたんですが、やっぱり自分がやりたい事業ではなかったので、楽しくはないんですよね。そこでまた自問自答して、私は何をやりたいんだろう?どんな人生を送りたいんだろう?というところをもう一度、突き詰めました。そんな中で、もともとあった“多様性”という価値観を広めたい、というところに原点回帰しました。」

——そこからCBDウェルネス&スキンケアブランド『MUKOOMI』を立ち上げるわけですが、なぜCBDだったんですか?
「起業する前に、モデルの仕事でNYに行ったんですが、その時現地ではCBDがものすごいトレンドだったんですね。当時の日本ではあまり知っている人は少ない時期だったんですが、そこから興味を持ちました。いろいろあって事業に専念することにはなったのですが、自分のやりたいこととCBDの効能が合致した感じです。」



ーーどんなことが一致していたんですが?
「私が伝えていきたい多様性って、『自分らしくある』ということも大事だと思うのですが、CBDって心をニュートラルな状態にしてくれるものだと思っているんです。日々忙しく過ごしていると、どうしても感情のアップダウンが生じますよね? なるべくフラットな心でいることで、良いことも悪いことも含めて感情の波に翻弄されずに済み、生きやすくなると思っていて。プラスで私はもともと肌が弱かったんです。女性にとって肌が整っていることは心身の安定にも繋がる。あとは純粋に、自分は眠りの質があがったり効果も感じたし、ニキビも緩和された。そして実はヘンプ(麻)って土壌改良などにも役立つと言われていて、サステナブルな植物でもあるんです。そういった理由から、CBDスキンケアを選びました。」

ーー今後の目標は?
「多様性という価値観をもっと広めていくためにも、ただプロダクトを売るだけではなく、オンラインサロンやイベント開催なども今後はやっていきたいですね。一方的ではなくあらゆるコミュニケーションがとれるブランドとして成長していきたいです。」

——今までのお話を聞いていると、とても行動力があるように思えます。もともとですか?
「自分の感情に対して忠実に行動している、という感じなのかもしれません。そのぶん後先を考えないところがあるので、そこが改善点ですね。」

——いつも元気で明るいイメージですが、落ち込んだりすることは?
「もちろんあります。そんな時はとことん落ち込みます。昔は落ち込まないようにしたいと思っていたんですけど、それってやっぱり無理なんですよね。『今はそういうフェーズなんだな』と思うようにして、自然とモチベーションが上がるまで待ちます。あとはカレーを食べますね(笑)。やっぱり自分のルーツなのか、インドカレーが好きなんですよ。その代わり嬉しいことがあったり何かを達成した時は思いっきり自分を承認してあげます。その瞬間瞬間に、自分の感情としっかり向き合うことが大切だと思っています。」

——最後に、美しく健やかに過ごすために秘訣を教えてください!
「週に1回はジムに行って運動をします。身体を動かすと、心もポジティブになる気がするんです。そして何より好きなことしかしないこと!お仕事でもプライベートでも、自分が好きな人としか会わないです。でもただわがままを言うという意味ではなくて、たとえばブランドのため、自分の成長のためになら、そこまで好きじゃないことでもやりますよ。それはやりたいことに繋がっているから。昨年から瞑想もするようにもなったんですが、今この瞬間を生きることで、自分が心から求めていることに耳を傾けることができる。それに忠実になるように心がけています。眠かったら眠るし、食べたいものは食べる。瞑想は自分を客観視することにも繋がるので、あらゆる場面で迫られる選択もしやすくなりましたね。とにかく窮屈だと思うことはしなくていい。自分が楽しいと思うことを、みんなができる世界になるといいなと、思っています。」

いつも笑顔を絶やさず、落ち込んでいる姿が想像できないほどパワフルなプリアンカさん。そのハッピーなオーラは、常に自分自身に向き合い続け、自分が輝くための努力を惜しまないからこそ、醸し出ているのだろう。誰かのために何かを届けること。それは、自分自身を大切にできてからこそ、実現できるのかもしれない。


吉川プリアンカ
priyankayoshikawa
CBDウェルネス&スキンケアブランド『MUKOOMI』代表。インド人の父親と日本人の母親を持つミックス。幼少期をアメリカとインドで過ごし、小学校5年生の時に帰国。16歳からモデルとして芸能活動を始める。世界3大ミス・コンテストであるミス・ワールド・ジャパン2016年度日本代表。



Text by Sonomi Takeo