2020/12/06

REMEDY

見た目から内側まで美しく健康でいるために|苅部淳先生インタビュー

外側を美しく見せることだけでなく、内側から美しくなることが真の美しさの近道である。そしてその意識が予防医療を意識するきっかけになるはずだ…そう真剣に取り組んでいる医師、苅部淳先生にお話を伺いました。

ーー約1年半前、予防医療研究協会を立ち上げ、同時に麹町に皮膚科・形成外科クリニックを開業したそうですね。
「はい。人々の健康意識を変えていきたい、そう考えて立ち上げました。医者だからって、病気の人だけにフォーカスをあててしまっていることが問題で、もっと予防的な概念を伝えていきたいと思っています。広めていくこと、またビジネスとしての難しさも感じながら、方法を模索しています。
まず日本には医学部にそういう“診療科”が全くありません。海外だと予防医学というジャンルがあり、専門医もいて人気があります。彼らがリスク管理や食事管理をするんです。本来はそれが医療行為で、食事や運動習慣、家族歴など、様々な環境要因を医師がアドバイスしていくべきだと考えています。」

――特に日本人の健康意識は低いということでしょうか。
「健康が当たり前だと思っている方が多いですよね。でも毎日会社に行けること、学校に行けることがどれだけ奇跡的なことか…。新型コロナウイルスだって、『自分は感染するはずがない!』とどこかで思っているでしょうし。そんな環境は日本とアメリカなど先進国だけ。でも奇跡的なことなんですよね。そこで予防医療を若い人にどうやって伝えていくべきかと思った時、やはり化粧品や美容が近道だと思いました。美しくあるためには、心から変えていかなければならない。外側から初めても良いですが、ゴールは心の健康であり、それが体全体の健康。そこまで満たしていくのが、本来の医療だと考えています。自分自身が自分のことを認めて綺麗になっていく、そこに意識を持っていく指南役が日本にはいないんです。それが医療者であったら良いなと思います。」



――予防医療研究協会は、その意識を変えていくというのが目的ということですね。
「そうですね。認知症も糖尿病も…若い人は関係ないと思っている。健康意識が圧倒的に足りない。将来的に悲惨な状況になることは目に見えていますよね。医療費や研究費がどんどんかかり、悪循環になります。日本の医療費は100兆円を超えているんですよ。それを負担するのは結局私たち自身です。若い人たちがなぜそれを自覚しないのか。『なんでこんなに税金を取られているんだ!』などと思うなら、自分の健康を考えて自分を守らなければいけないと思います。ちゃんと健康意識を持って管理できる人は、保険料も年金も、税金だって安くして良いと思う。そういう社会的な枠組みを作っていかなければならない時。そこまで変えていかないと、日本は衰退の一途をたどることになると思います。だから、美容から世界を変えていきたい。それが僕のビジョンです。」

――具体的にどんな活動をしているのでしょうか。
「例えば、ミス・ジャパンの講師として、最終選考まで残った46名の方にセミナーで講義をしています。美の象徴として、発信力もある存在である彼女たちに、内側も外側も綺麗になることの大切さを発信してほしいからです。例えば美容外科医として、外面的な美を追求するためにレーザー治療についてお話しすることも可能ですが、僕にとってはそんなことは重要ではありません。内面が綺麗であれば、正直美容整形する必要なんてないと思っていますから。コンプレックスの解消のために、美容外科がちょっと背中を押してあげることはありますが、内側が美しくなることこそが大事だと思います。」



――先生はもともと外科医として活躍されていたんですよね。
「そうなんです。開業前は東大病院で10年ほど形成外科にいました。形成外科は文字どおり“何かを作り出す”ところ。鼻や耳を作ったり、乳がんの患者さんの胸を再建したり、性転換手術で女性器や男性器を作ったりします。保険適用でも美容でも、私のやっていることは変わりありません。見た目を正常に戻すのが仕事です。例えば手術後にむくんだ手足まで治療して心のメンタルケアをしていくことまで必要。病気を治したら終わりという治療の時代は終わりです。形成外科医、美容外科医にはそういうことができるはずだと思います。」


クリニックのグリーンは先生ご自身がコーディネート

――クリニックにはどんな方がいらっしゃいますか?
「美容外科クリニックというとキラキラしたイメージがあるかもしれませんが、皮膚科から譲渡してもらったこともあり、病院っぽさはありますよね。サラリーマンや議員の方などの男性の方も多いです。広い層の方々に来ていただいていますね。」

――日本はステータスやキャリアと健康が比例していないと言われていますよね。例えば
経営者の方でも体調管理が出来てなかったり、肌荒れや手元が美しくなかったり…海外の方は自己管理能力が高い気がしますが、そのあたりはどうお考えですか?
「セルフマネージメント能力は、その人の経営能力と直結しますよね。自己管理ができていないということは、会社の管理だってできないわけですから。医者だってヨレヨレのスーツを着てコンビニ弁当を食べている人が多いのが現状です。日本はセルフマネージメントが問われていると思います。
それは、高度経済発展によって食育など、おろそかにしてきたことが多くあることも影響しているのでしょう。コンビニはとても便利ではありますが、よくないこともたくさんあります。自分で判断する能力が必要ですよね。自然からエネルギーをいただく、命をいただくことを感じて食べるのと、そうでないのとでは全く違います。例えば普段3食コンビニでカップ麺などを食べて、食事をおろそかにしている人が、高いレーザーをするのは意味がない。肌を作るのは食事なんです。普段食べているものが骨を、血を、作っているわけですから。食育も変えていきたいです。ですので、シミやしわでご相談にきた方も必ず食事指導を行なっています。」

――取捨選択する力は大事ですよね。
「はい。美容が好きなら、正しい美容を学ぶべきです。流行ではなく、正しい食事方法や医学的に効果のある治療を。日本はメデイアの影響も大きいと思います。流行りものを1回試したら終わり。でも健康はブームではありません。習慣に変えていくことが大事です。それを若い方たちに伝えていきたい。」

――先生ご自身のライフスタイルについて聞かせてください。
「朝は苦手なので8時〜9時くらいに起きます。睡眠は6〜7時間ですね。時間があればヨガやストレッチを。あまり激しい運動をすると酸化してしまうので、やるとしても10分ほどの無酸素運動くらいです。朝はコーヒーと体の調子を見てプロテインを飲むこともあります。10時に出勤で、昼食は取らず、お腹が空いたらピーナッツかアーモンドを取ります。ナッツとコーヒーでお腹いっぱいになるので。ちなみにコーヒーは夕方17時くらいまでであれば睡眠にも影響しません。夜は会食が入れば食べますが、週に1、2回です。家に帰れるときは、何も食べない時もありますし、ぬか漬けや納豆キムチなどを食べています。植物性が体に合っているようです。朝にはお腹が空になっているので思考がクリアになり、アイディアもわきますね。」

――ありがとうございました。最後にこれから冬本番。美容において気をつけた方が良いことなどはありますか?
「スキンケアを大事にした方が良いですね。目元など、乾燥の気になる季節ですが、洗い過ぎてしまって逆に油分が取れてしまったり、油分と水分のバランス、そして食べ物の内容によって乾燥を起こしてしまうことがよくあります。肌を守っているのは実は肌の常在菌であって殺菌や消毒をやり過ぎてしまうと菌が死んでしまうので荒れてしまいます。当院では乳酸菌入りのローションをお勧めしています。ご自身の体の状態を深く観察し、必要なものを取り入れていくことこそが美容医療なのです。
そうやって、美しくあるために、正しい方向に導いてあげることのできる医師でありたいと考えています。」


一般社団法人 予防医療研究協会 理事長
苅部 淳
日本形成外科学会専門医、日本抗加齢学会専門医、日本医師会認定産業医
順天堂大学医学部卒業
東京大学付属病院形成外科 入局
埼玉医大総合医療センター 形成外科・美容外科 助教
福島県立医大付属病院 形成外科
寿泉堂総合病院 形成外科
山梨大学付属病院形成外科 助教・医局長
麹町皮膚科・形成外科クリニック 院長


「見た目から内側まで美しく健康でいるために」をモットーに、苅部医師が開院したクリニック。
ニキビ、アトピーや皮膚腫瘍、けがはもちろん、傷跡やニキビ跡・毛穴、しみやたるみなど美容医療で見た目の健康を取り戻してもらいたいと考える。
いつまでも美しくありたい女性のための美容診療はもちろん、ビジネスでの第一印象を大切にする男性に対しても美容診療を行っている。
さらに、見た目の健康を維持するためは内側も健康でなくてはならないという考えで、アンチエイジングのため、様々な検査や治療法を通して、病気にならない体作りを患者様それぞれに合った方法で提供している。
また特殊な治療として、大学病院で培ったリンパ浮腫治療、性同一性障害の治療を行なっている。

Text by 関 早保子