2020/10/11

WELLNESS

鎌倉一法庵・山下良道さんが教える、呼吸瞑想を実践!

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心を鎮め、整えることで、心身ともに良い影響を与えるといわれているマインドフルネスや瞑想。前回は、鎌倉一法庵の禅僧・山下良道さんに禅との関係性や、マインドフルネスや瞑想とは何かということをお話いただきました。

さて、今回は瞑想の実践編です!
紹介するのは良道さんが国内、アメリカ、ミャンマーなどさまざまな場所で培った瞑想メソッドによるものです。

「お伝えするのは海外で修行して帰国後、試行錯誤を重ねて現代に生きる誰もが取り組める瞑想として完成した瞑想で、これをワンダルマ・メソッドと呼んでいます。どうぞ今日から実践してみてください」(良道さん)

〜呼吸を観る瞑想メソッド〜
呼吸に意識を向けることで、「今ここ」にいることに完全に気づいていきます。

1. 瞑想をする環境を整える
まず部屋を片付けて掃除をし、坐る場所を整えます。
腕時計やアクセサリーは外し、携帯は電源を切るかマナーモードに。
ゆったりとしたリラックスできる服装で行いましょう。(デニムは膝が曲がりにくいので避けるとよい)

できれば上質なお線香を焚く。お線香は空気を清浄にして、心を鎮める作用があります。
部屋が明るすぎるなら、照明を少し暗くしたりカーテンを引いたりしながら調節を。夜であれば照明を消してロウソクを灯すとより落ち着きます。


2.座布団やクッションを敷いて坐る
大きめの座布団を敷いて、その上に小さなクッションを載せて坐る。
(膝や股関節が悪く足が組めない場合は、椅子に坐って行ってもOK。その場合は、足がきちんと床に着く椅子に坐り、背もたれを使わず背筋をまっすぐ伸ばしてください)



【基本姿勢】
・クッションの上にしっかりとお尻が載っているのを確認してください。尾てい骨の下にクッションがある感覚です。ただし、深く坐りすぎないように注意を。
・片足の先を持ち、自分のほうにできるだけ引き寄せる。もう片方の足を反対側の足の太ももの付け根に乗せます。
※両方の足を太ももに乗せる坐り方を「結跏趺坐(けっかふざ)」、片方の足だけ乗せる坐り方を「半跏趺坐(はんかふざ)」と言います。半跏趺坐で十分ですが、難しい人はあぐらや正座でも大丈夫です
※もしあれば、シンギングボウルや鏧子(けいす)(鐘)などを軽く3回鳴らし、鐘の音に注意を向けてから瞑想を始めましょう。終了時にも鐘を1回鳴らし、静かな感覚のまま日常生活に戻ります。


3.背骨をまっすぐに立てて、肩をリラックスさせる
上半身を、骨盤から左右にゆっくり揺らす。
メトロノームの針のように左右均等に揺らしながら、段々振り幅を小さくします。微調整しながら、最終的に背骨が真っ直ぐに立っている場所を見つけます。

両肩をグッと持ち上げて耳に引き寄せ、後ろに引きながら力を抜いてストンと落とします。これを3回繰り返すことで、緊張をほぐしていきます。

目を閉じてあごを引き、上の前歯の付け根に舌先を軽くあてます。
頭頂部で天井を押すようなイメージで、背筋を伸ばします。このとき、腰を反らせすぎないように注意を。

両手を膝の上に置き、天井に向けます。(手のひらの微細なエネルギーを最も感じやすい形)。
反対に手のひらを下に向けて膝に置くと、リラックスしやすい形となります。




4.呼吸はゆったりとした腹式呼吸で
瞑想中は、鼻から息を吸い、吐きながら自然な腹式呼吸を行います。
(腹式呼吸は瞑想の大切なポイント。おへその下あたりに手を当て、呼吸に合わせて下腹が膨らんだり縮んだりして、動いているかを確認すると◎)


5.体の微細なエネルギーを感じる
人間の体の中で最も敏感なセンサーが埋まっているのが手のひら。
手のひらに注意を向けると、人によって感覚は違いますが、「ピリピリ」「チリチリ」「シュワシュワ」といったような感覚を発見できるはず。微炭酸をイメージする。
この普段は感じない微細なエネルギーを感じていくことで、ネガティブな思考を止めて、「今ここ」の感覚を取り戻していきます。

【微細なエネルギーを感じる順番】
・右の手のひら→手首から肘→二の腕を通って肩へ。左手から左肩も同様に。
・右足のつま先→足の裏→かかと→足首→ふくらはぎ→膝→太もも→股関節から足の付け根へ。左足も同様に。
・両足の股関節のところまできたら、お尻がどのように座布団に支えられているか意識。そして、下半身全体の微細な感覚を感じていきます。
・背骨の一番下にある尾てい骨に意識を。そこから背骨に沿って、真っ直ぐ上に向かって微細な感覚を感じていきます。1㎝刻みで少しずつ上に向かいながら、微細な感覚が昇っていくのを感じてください。
・同時に、下腹部→胃腸→みぞおち→胸→肩の順で胴全体にその感覚が広がっていきます。
・肩→首→顔→頭の順に昇っていくのを感じます。頭全体に微細な感覚が広がったら、その感覚が体全体に広がっていくのを感じてください。
・呼吸に合わせます。息を吸いながら背骨を上がり、息を吐きながら降りてくる。

6.呼吸に意識を向けて瞑想する
鼻先に意識を向け、吸う息と吐く息を感じます。
鼻の入口に門番がいて、体に出入りする息を観ているようなイメージです。
ゆっくりと腹式呼吸をしながら、吸う息の「始まり」「真ん中」「終わり」を、それぞれしっかりと意識します。
鼻先で、体に入ってくる空気と出ていく空気を感じてください。

そのまま、ただ淡々と呼吸に意識を向け続けます。
目を開けて終了し、静かな感覚のまま日常生活に戻っていきます。



【POINT】
※その間何か思考が出てきても、判断や批評を加えず、受け入れていきましょう。何度追い払っても、雑念は湧いてきます。それと戦ったり、無理に制御しようとするのではなく、「受け入れる」。そして、また呼吸に意識を向けます。
※瞑想はひとりで行う場合、15〜20分が目安です。
※そのまま眠くなってしまい、寝てしまうと瞑想ではなくなってしまいます。疲れきった夜より、朝に瞑想をすることをおすすめします。満腹状態でも眠くなるので、瞑想の前は食べ過ぎないように。また、朝瞑想を行うことで、心を落ち着けてから日常をスタートできるというメリットも。

「前回でもお話しましたが、瞑想することですぐに幸せが手に入る、ということではありません。瞑想を逃げ道にしてはいけません。日常を大切にしながら、何かにおいて効用を求めるのではなく、瞑想を続けていくことであなた自身が変化して、あなたが作る現実が変わっていく。そうやって、今まで気づかなかったことに気づいていく道案内だと思ってください」(良道さん)

※参考文献…「本当の自分が見つかる瞑想入門」(河出書房新社)/山下良道著


いかがだったでしょうか。ぜひ、自宅で瞑想を行う際の参考にしてみてくださいね。
鎌倉一法庵のサイトで瞑想指導の音声も公開しています。良道さんの音声にそって瞑想することで、ひとりで行う場合にやりやすくなります。

初めて瞑想をする方にとっては難しく感じるかもしれませんが、前回良道さんがおっしゃっていたように、「失敗すること」も大事なことのひとつ。
1〜2回瞑想をしたからといって、何か特別な変化が必ずしも生まれるということではありません。
しかし、瞑想を日常生活に取り入れ継続することで、今まで見えなかった世界が待っているかもしれません。
自分に合った先生を探して見つけるのも、良いですね。
瞑想をきっかけに、ビープルの皆さんの未来がより輝かしいものになることを願っています。

山下 良道
鎌倉一法庵住職。東京外国語大学仏語科卒業後、曹洞宗僧侶となる。1988年にアメリカのヴァレー禅堂で布教、のちに京都曹洞禅センター、渓声禅堂にて坐禅指導を行う。2001年にはミャンマーで具足戒を受け比丘になる。2006年に帰国後、鎌倉一法庵を拠点に国内外で坐禅指導を行う。著書に「本当の自分とつながる瞑想入門」(河出書房新社)、「マインドフルネス×禅であなたの雑念はすっきり消える」(集英社)がある。

Text by Sonomi Takeo