2020/09/26

REMEDY

もっと知りたい! 免疫力UPに不可欠な「ビタミンD」のあれこれ

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機能性医学に詳しい斎藤糧三先生にビタミンDの重要性についてお話いただきましたが、「ビタミンDの素朴な疑問」を伺いながら、より深く探っていきましょう。

前回の取材で、インフルエンザや風邪の予防、アレルギー症状を軽くするための対策にビタミンDの十分な摂取が有効、ということが判明しました。今回はビタミンDを摂取する時の注意点や、サプリメントの摂取の仕方など、気になることを斎藤先生に伺ってきました。


ーーサプリメントはどうやって選べばいい? また、サプリメント摂取のタイミングは?

【選び方】
「一般的なドラッグストアのものでも問題はないのですが、ビタミンDがついでに入っているものでなく、ビタミンD補充を目的に製造されたもので、含有量が1カプセルあたり1000IU(25㎍)のものを選びましょう
栄養療法に精通した医師に、採血して血中濃度を見ながらサプリメントを処方してもらうのが理想です。
保険処方できるビタミンDは、骨粗鬆症の治療目的の『活性型ビタミンD』ですので、ビタミンDの補充目的には不向きなので、そのあたり区別がついていないドクターは避けた方が無難です。
海外製で格安なものも手に入りますが、患者様の採血をしながらビタミンDの血中濃度をみていると、『表示通り入っていないな?』と思われる商品が少なくない印象です。サプリメントはカプセルと錠剤タイプがありますが、錠剤の方が製造時に栄養成分がこわれやすい傾向にあるので選ぶなら、カプセルタイプを選んだ方が良いかもしれませんが、GMP(Good Manufacturing Practice)基準という医薬品と同レベルの管理基準で製造されたサプリメントは、原料調達に際しても厳しく、また最終製品が口に入る時に表示通りの栄養成分量を担保するような製造を行っていますので安心です。栄養療法を実施しているクリニックで採用されている様な、医師処方向けのメーカーを選ぶのが無難です。もちろんできれば採血をしながら。
メーカーの中には天然由来原料とうたっているところがありますが、ビタミンDサプリメントの原料は基本的に天然由来。化学合成ではなく、多くは羊の毛などから抽出する場合がほとんどです。」

【選び方のまとめ】
・1カプセルあたり1000IU(25㎍)の含有量
・医師処方用のものが望ましい
・保険薬の活性型ビタミンDは補充に不向き
・できれば採血しながら

【摂取のタイミング】
「タイミングは、花粉症を改善したい場合、花粉に暴露する朝に摂取。

・毎朝100㎍(4000IU)のビタミンDサプリメントで摂取+午後、もし症状がぶり返したら、追加で100㎍(4000IU)をとる
これを1カ月続けましょう。症状が安定してきたら「日光浴+食事」もしくはビタミンDサプリメント50㎍(2000IU)に減らしていく。」



ーー合わせて摂取した方が良い栄養素を教えてください。
「ビタミンDの効果を上げるためにも良質なたんぱく質、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、亜鉛、鉄などの摂取も心がけるといいでしょう。粘膜のバリア機能を維持するためには、上皮細胞の適切な新陳代謝が必要、タンパク質、亜鉛、ビタミンAが不可欠。またその細胞の土台作りにはビタミンC、鉄などが重要です。」


ーービタミンDが生成しにくい人がいるなど、体質、遺伝による個人差はある?
「我々の人体は、10万年前に世界中に移動する以前、赤道直下のアフリカに250万、生活したときにほぼ完成しています。すなわち、紫外線に事欠かない環境で生活するようにデザインされているのですが、紫外線の少ない北や南に移動することでビタミンD欠乏が起こり、それに適応するために皮膚の色を白くした(白い方が生き残った)と考えられています。
皮膚の黒色メラニンは、ビタミンD合成を阻害しますので、皮膚の色が濃いとビタミンD血中濃度は低い傾向があります。ただ、カラダはよくできていて、少ないビタミンD血中濃度でもやりくりできるように特定のタンパク質で調整していることもわかっていて、今後はその遺伝子を調べて、ビタミンDを最適化するようになるでしょう。しかし、そのような遺伝子検査が受けられない現在は、足りない人は、ある程度のレベルまで上昇させるのが “転ばぬ先の杖” になることでしょう。
というのも、乳幼児のビタミンD欠乏が待ったなしのところまで来ています。母乳栄養信仰があります。人工乳よりも天然(母乳)が優れているというイメージ。母乳にアドバンテージがあるのは、特に出生まもなくの初乳です。子どもに母体由来の免疫タンパクをもたらす点で有用です。しかし、それ以降の母乳のメリットは、母体の栄養状態に大きく影響をうけます。
ビタミンDが充足しているのは国民のおよそ20%と述べました。多くのお母さんがビタミンD欠乏なので、母乳に含まれるビタミンDが少ないのです。
それに重ねて、近年子供に日光浴させない親が増えました。皮膚でも合成する機会がない子供にとって人工乳は、ビタミンDを増やす最後の砦なのです。
これはアトピー性皮膚炎や食物アレルギーが子どもに増えてきたことも無関係でない。そればかりでなく、最近は『くる病の大流行』が起こっています。
戦後かつて栄養失調が深刻だったころは、当然対策がなされ、くる病を防ぐために肝油ドロップなどで、ビタミンDを摂取することが推奨されていましたので、くる病という言葉は耳にしなくなりました。この飽食の時代にビタミンD欠乏が起こり、くる病の大流行とはまさに “寝耳に水”。
また、60歳以上になると皮膚でのビタミンD合成が著しく低下します。高齢者の方は、食事やサプリメントでのビタミンD補給が大切になってきます。」


ーービタミンDはどれだけ摂取しても問題ない?

1日10000IU以下であれば、ビタミンDの過剰によるトラブルや有害事象は報告されていません。過剰に摂り過ぎると起こる危険があるのは、血中にカルシウムが増える高カルシウム血症です。吐き気、食欲不振、便秘、頻尿、のどの渇き、体重減少などの症状が起こります。まれに認知症のような記憶障害を引き起こすことも。さらにカルシウムやリンの血中濃度が上がり過ぎると血管や腎臓などに負担をかけます。カルシウムが沈着することで関節の石灰化、ひいては腎不全の引き金になることもあります。長く摂取する場合は1日2000IUを目安にして、症状や季節に応じて4000IUまで一時的に増やすとよいでしょう。」

※サルコイドーシスなどの肉芽腫性疾患は、石灰化を助長するおそれがあるので、患者さんはビタミンDの過剰摂取には注意が必要。また、リンパ腫や腎臓病など高カルシウム血症を引き起こす恐れがある患者さんの場合も同様。利尿剤の一種、ヒドロクロロチアジドを服用されていると、血中カルシウム濃度が増すリスクがあります。特定の疾患がある場合は、日頃の摂取量を調整する必要がある場合もあるので、指導できる医師とよく相談してください。」


ーー風邪予防などのウイルス対策、花粉症などのアレルギー対策の他に、ビタミンDを十分摂取することで有効なことはありますか?

「ビタミンDと関連性があると言われているのが、
・糖尿病
・不育症(妊娠するが出産に至らず流産してしまい、それを何度も繰り返すケース)
・各種がん(大腸がん、胃がん、食道がん、すい臓がん、肝臓がん、肺がん、乳がん、前立腺がんなど)
・ くる病
などが報告されています。日本の研究でも国立がん研究センターが、血中ビタミンD濃度と大腸がんのリスクを調べたところ、ビタミンD濃度が最も高いグループの直腸がんの発症リスクは最も濃度が低いグループに比べて、男性で90%、女性で70%も低かったという報告を出しています。ただ、予防や再発のリスクを下げるといったことに有効なもので、“治療” や “治す” ということとはまた異なります。」


ーービタミンD不足かどうか調べるためには、クリニックはどう選べばよい?

「ビタミンDが足りているかどうかを知りたい場合は、25(OH)ビタミンDの血中濃度を測定してもらわなければいけません。
近年、健康保険適応されましたが、適応外ですと自費の検査となります。通常、自費検査では1万円ほどかかるところが多いようです。
『骨粗鬆症の検査ですね』と、骨粗鬆症で保険が適応されている1-25(OH)ビタミンDの検査と勘違いされてしまうようでしたら、そのクリニックは避けましょう。もちろん、検査を受ける前に、念を入れて25(OH)ビタミンDの検査であるか、確認する必要があります。
栄養療法やサプリメント外来をうたっているクリニックはたくさんありますが、この25(OH)ビタミンDの検査を受けられるクリニックは、日本機能性医学研究所でも案内しています。
また、分子整合栄養医学、分子矯正栄養医学、オーソモレキュラー医学をうたっているクリニックでも取り扱っている可能性があるので、確認してください。」


ーー日光浴がビタミンD摂取に有効とのことでしたが、正しい日光浴を改めて教えてください。

「日本人の肌質にとって推奨されているのは、
・有効な紫外線B波(UVB)が地表に届く季節(4月〜10月※)
・太陽が南中に達する前後2時間の間
・服装は、半袖、短め丈のボトム、帽子なし
・15〜20分の日光浴を週2〜3回行う

※地域によってことなります。国立環境研究所/地球環境研究センターが提供するビタミンD生成・紅斑紫外線量情報のモバイル用簡易サイトが有用です。
です。曇り空や雨天でも量は減るものの、紫外線は地表に到達しているので、必ずしも晴れていなければならないわけではありません。ただ、大気中にチリ、PM2.5や排気ガスなどが多いと到達量は減少してしまいます。また、UVBを通さない室内の窓辺や車の窓ガラス越しではなく、日焼け止めも塗らず、日光に直接さらすことが大切です。」


ビタミンDは必要不可欠な栄養素で、且つ日本人は大多数の人が欠乏しているという現状がわかりました。これからの季節は紫外線が弱くなるため、サプリメントや食事で上手に取り入れて、免疫細胞を活性化させることで風邪やインフルエンザに負けない身体をつくりましょう!


日本機能性医学研究所 斎藤 糧三先生
日本機能性医学研究所所長。東京・五反田にある温熱治療で自律神経を整える専門施設サーモセルクリニックの総院長も勤める。自身がアトピー性皮膚炎であった経験から、食物過敏症検査、腸内環境の改善治療、スキンケアの造詣も深い。テレビなど、各種メディアでも活躍し、数々の書籍も執筆。著書に『サーファーに花粉症はいない』(小学館刊)、『病気を遠ざける!1日1回日光浴』(講談社刊)などがある。

Text by Sono Hirose