2020/09/21

REMEDY

斎藤糧三先生が、私たちに必要な栄養素「ビタミンD」を解説!

Photo by Shutterstock

寒い冬の到来に備えて、今から免疫力アップのためにしっかり風邪やインフルエンザなどのウイルス対策をしておきたいところ。免疫には、栄養素のなかでも「ビタミンD」の存在が重要なのはご存知でしょうか。今回はビタミンDの必要性について、機能性医学などに詳しい医師、斎藤糧三先生が教えてくれました。

風邪やインフルエンザを防ぐためには
どう対策していればいい?

ーーウイルス感染予防として、マスクを着用したり、手洗いうがいをする、ということは大切だと思いますが、その他に対処法はあるのでしょうか。
「ウイルスは、感染者の咳やくしゃみで放出されたウイルスを含む唾液・鼻水が接触または空気中を浮遊することで吸入され、気道にウイルスが到達します。それを防ぐために、そして出さないために…つまり飛沫などを防ぐためにもマスクの着用は必要です。あとは水分補給も大事です。喉や口がカラカラになっていてはダメ。乾燥すると喉の粘膜の働きが悪くなり、ウイルスなど悪いものを排除してくれる機能が落ちてしまうんです。水は1日1.5ℓを目安に、こまめに分けて飲みましょう。空気清浄機などを使って、部屋の湿度を保つことも忘れずに。」

ーー保湿が大切なんですね! 冬は夏より水分補給が足りなくなりがちかも…。
「乾燥は大敵です。湿度は60%以上を目安に加湿を。抗菌マイナスイオン発生機を併用しても。加湿器のカビによる害を減らせる可能性があります。また、空間除菌できる製品を持っておくといいですよ。

ーー外出時に気をつけることは?
「これもやはり、人混みはなるべく避ける、どうしても行く時はマスクを着用。ウイルスなどの粒子を寄せ付けないスプレーを携帯してもよいですね。ウイルスの粒子は花粉や静電気に帯電しているため、肌や衣類をマイナスにすることで帯電下粒子を寄せ付けない、というメカニズムです。マスクなどと併用して使うとよいでしょう。」


現代人のほとんどが「ビタミンD」欠乏症!?

ーーウイルスをやっつけるためにも「免疫力をつけた方がいい」というのも聞いたことがありますが、そもそもどうやって免疫力をつければいいのでしょうか。
「免疫というのは、『一回感染したら入って来ないでね』と、水際でウイルスを防ぐ力。まさに“疫を免れる”役割なんですよ。そこで必要なのが、たんぱく質、ビタミンA、亜鉛、ビタミンC、鉄、グルタミンなどの栄養素です。どれも免疫細胞を活性化させるのに大切な役割を持っています。」

ーーどれも自分がどれだけ足りているかわかりません…。
「しっかり調べるならば、クリニックで状態を診てもらうことも手ですが(※)、日本人が特に欠乏しているのがビタミンDなんです。このビタミンD、実は正常な免疫反応を促すのに大切な栄養素。にも関わらず、欧米のビタミンDの摂取基準に比べると圧倒的に少ない。これは国民病と言えるでしょう。」

ーーそんな大事なビタミンDの摂取基準が、なぜ日本では低いのでしょう
「厚生労働省の定めたビタミンDの摂取基準は、カルシウムの吸収する栄養素としての基準。すなわち、骨の健康を保つための目安量なんです。ビタミンDはウイルス対策のみならず、花粉症対策、ガン予防などさまざまな機能を持つと解明されつつあるので、今の摂取基準は見直さなければなりません。ビタミンDからは『ディフェンシン』というたんぱく質が作られていて、これが喉や鼻の粘膜を保護する作用として働いてくれます。ビタミンDが欠乏することで免疫機能のバランスが崩れ、いわば免疫の暴走が始まり、ウイルス感染がしやすくなったり、花粉症などのアレルギー疾患にも繋がってしまいます。逆に言えば、ビタミンDを十分に摂取していれば、花粉症対策にも有効なんです。」

ーーどうやってビタミンDを摂取するのが効果的なのでしょうか。
「ビタミンDの摂取には、大まかに言うと3つあります。それは、

・日光浴
・サプリメント
・食事

この3つです。夏場であれば日光浴をして紫外線のUVB波に当たることで、ビタミンDは生成されます。日が高いお昼の時間、15分程度で構いません。逆に赤くなるまで日光浴をしてしまうのは、『浴び過ぎ』な証拠。なので、赤くなるまでは浴びてはいけません。何事もほどほどに!地上に到達するUVB波が減少してしまう秋から冬、春先にかけてはタンニングマシン(日焼けサロン)でもOKです。ただ、紫外線を浴びるとすぐ赤くなって、黒くならずに元に戻ってしまう人は、日光浴もタンニンングマシンの使用もあまり向いてません。食事だと鮭やマグロ、いわしなどの魚やしいたけやきくらげなどのきのこ類はビタミンDが豊富。ただ、推奨する摂取量の目安は1日2000〜4000IU。この量を食事だけで十分に摂取することは難しい。日光浴やサプリメントで補いながら、トータルで摂取していくと良いと思います。」

ーー日光浴がよいとなると、ビープル世代の女性が気になるのはやっぱり紫外線。日焼け止めを塗ってはダメですか?
「そうですよね。でも、それが現代人におけるビタミンD欠乏症の要因でもあるんです。昨今の美白ブームで日光を浴びることがご法度にする風潮が続いているので、『紫外線=悪』という認識を持ってしまっている人は多いと思います。ですが、日焼け止めを塗ってしまうと、ビタミンDは残念ながら生成されないんです。SPF15で99.5%も(ビタミンDの生成が)減少してしまうので。でも、シミやシワにとって、紫外線はやっぱりよくはない。気になる方は、面積が少ない顔だけ日焼け止めを塗って、体は日焼け止めを塗らない、という対策をしてください。」


(窓際の写真入れる)
ガラスで紫外線がブロックされていまうので、日当たりがよくても窓際ではビタミンDは生成されないのでご注意を。

ーーこれから紫外線が少なくなっていく時期なので、サプリメントで補ったほうがよいということですよね。
「そうですね。秋冬はやっぱり紫外線が少なくてビタミン生成が難しいので、これからの時期はサプリメントで補い、春夏になったら日光浴をして、ビタミンDの貯蓄をするのが効果的。サプリメントはドラッグストアのもので大丈夫ですが、1カプセルあたり1000IU(25μg)のものを選びましょう。」

ーービタミンDと合わせて摂取したほうがよい栄養素はありますか?
「ビタミンDを摂取することで、ビタミンAが欠乏してしまうケースがあります。ビタミンAが欠乏するとドライアイになったり、ニキビができる原因になってしまうので、合わせてビタミンAを摂取することを心がけましょう。食事の場合、レバーやうなぎなどに豊富に含まれていますが、なかなか食べる機会も少ないでしょうから、こちらもサプリメントを上手に取り入れると良いです。」


(※)ビタミンDの検査は、斎藤先生が所長をしている日本機能性医学研究所でも案内しています。

先生曰く、ビタミンDが持つ底力はまだまだあるそう。
次回はより深くビタミンDを知るべく、『もっと知りたい!「ビタミンD」の正しい知識』について、お届けする予定です! 


日本機能性医学研究所 斎藤 糧三先生
日本機能性医学研究所所長。東京・五反田にある温熱治療で自律神経を整える専門施設サーモセルクリニックの総院長も勤める。自身がアトピー性皮膚炎であった経験から、食物過敏症検査、腸内環境の改善治療、スキンケアの造詣も深い。テレビなど、各種メディアでも活躍し、数々の書籍も執筆。著書に『サーファーに花粉症はいない』(小学館刊)、『病気を遠ざける!1日1回日光浴』(講談社刊)などがある。

Text by Sono Hirose