2020/09/11

INTERVIEW

アトピーとニキビを人一倍気にしていた私を救った言葉|女優・藤井美穂のボディポジティブ論

From Yogajournal Online(Photo by Miho Fujii)

アメリカで女優やプラスサイズモデルとして活動する藤井美穂さん。日本では自分を否定し続けていた彼女が、英語も話せぬまま飛び込んだ街で出会ったのが「ボディポジティブ」という考えでした。この連載では、藤井美穂さんがアメリカ生活を通して学んだボディポジティブ精神とそこから得た自身と周囲の変化などを伝えます。

10代の自尊心は肌荒れでボロボロになっていた

私は13歳の時からアトピーに悩まされてきました。思春期に入り急に始まった肌荒れに10代の自尊心はボロボロになりました。掻くのは恥ずかしいのに、掻くのをやめられない。掻いたところがニキビになって、顔は真っ赤。その上からニキビを引っ掻いてしまい、肌に残るニキビ跡。

クラスメイトに言われる、「美穂ちゃんもっと清潔にしたほうがいいよ?」人一倍アトピーもニキビも気にしてケアしてるのに、そんな心ないことをアドバイスのように言われて、気持ちは折れそうでした。なにをしていても周りの目が気になってしまうのです。

思春期を過ぎてもアトピーは治らず、大学もずっとファンデーションでカバーしないとどこにも行けない。隠したって鏡を見れば、肌の上で影になっているニキビ跡がよくわかる。憎くて憎くてしかたない。これは私の中でトラウマになってしまい、口に出すのも恥ずかしくなってしまいました。

「みんな私の肌のこと言わないのは、言ったら可哀想なくらい酷いからなんだろうな」なんて、言われないことに関しても悪い方向に受け止めていました。

このトラウマから私を救ってくれたのもボディポジティブでした。

ボディポジティブは外見に関するあらゆるものが含まれます。もちろん、肌もその一つ。

ボディポジティブをSNSで知ってからは、肌がまだらになる病気のモデルさんや、妊娠線に色を塗ったアート、化粧の下のニキビを写真で載せるセレブリティなど、たくさんのありのままを大切にする人々を目にして、徐々に自分の肌をありのまま受け止める土台ができていきました。

初めて大きなCMの仕事をした時、自分の肌が汚いんじゃないかと、胸元の湿疹を消した方がいいかな?メイクさんに尋ねました。

するとメイクさんは

「あなたが気になるなら消してもいいけど、気にならないならそのままでもいいんじゃない?」

と答えてくれました。特に自分らしさを大切にすることがテーマのコマーシャルだったので、私が何が好きかを尊重してくれたのかもしれません。この言葉を聞いたときに心の中で怖がっていた自分は肩の荷が降りたように安心しました。

私の肌の評価は自分の心地よさで決めてもいいんだ、とわかったのです。汚いと思われるかもしれない、と怖がる必要はない。と気づきました。

そこで友だちに自分が自分の肌が汚いことを気にしてると告げました。友だちは

「そう?化粧してると全然わかんないや」

と言いました。

私はずっと化粧をしても隠せていないと、化粧が終わっても落胆することばかりでした。隠そうとしてることも痛々しく思われていると考えていました。

しかし鏡を見て、何度も見てるから、どこにあるかすぐにわかる傷ばかり眺めて落ち込んでいるのは自分だけなのかもしれないと思いました。他人は自分の傷なんて見てもいないし、私が思ってるより私のことを綺麗に見てくれてるのかもしれない。そう思うと無性に安心しました。

それからは自分の肌をみて落胆する時間は短くなっていきました。

他の仕事で出会うモデルの人たちも、現場で化粧してもらいますから、化粧をする前の顔も見ます。写真の中ではあんなに美しいモデルさんもメイクの下は完璧じゃなくて、凄腕のメイクさんがパーフェクトに仕上げてカメラの前に立ってることを知ると、彼女たちも私と同じ人間なのだと思えました。

メディアの中に作られた完璧な女性像は鏡の中の自分とイコールでなくても構わないんだと気づきました。今では自分の肌をずっと好きになれましたし、鏡の前で落ち込むこともすっかりなくなりました。鏡を見るときはウキウキするメイクをして、カワイイ自分にうっとりしてる時ばかりです。


出典:アトピーとニキビを人一倍気にしていた私を救った言葉|女優・藤井美穂のボディポジティブ論
https://yogajournal.jp


ライター/藤井美穂
女優、コメディアン、プラスサイズモデル。 ハリウッドで国際派女優を目指し奮闘中。その傍ら、プラスサイズモデルとして、インスタグラムでインフルエンサー活動も行っている。インスタグラムは現在7万人のフォロワーが、twitterには2万人のフォロワーがいる。

Text by 藤井美穂