2020/07/16

from BIOPLE

ごみのない社会を目指す|上勝町から新たな一歩を踏み出そう

徳島県上勝町「WHY」訪問レポートの連載最終回は、アクションホテル「HOTEL WHY」について。ここで私たちは、新たな一歩を踏み出すことになる。

徳島県上勝町について、そして2020年5月30日「ごみゼロの日」に上勝町にオープンした環境型複合施設上勝町ゼロ・ウェイストセンター「WHY」についてに続き、いよいよアクションホテル「HOTEL WHY」のレポートをお届けしていこう。


上空から見た施設

と、その前に!施設全体を上空から見ると、実は建物全体がハテナマーク「?」になっている。地形に沿って、また施設機能を考えて作ったら、結果的にハテナになったと言う。このハテナマークの下の丸部分が、今回紹介するホテルだ。


チャックイン時に使用する分の石鹸をカット

タブレットでペーパーレスのチェックインを済ませると、レセプションカウンターの上に出てきたのは「無添加石鹸本舗」の長い石鹸と、木製の石鹸カッター。必要な量だけ宿泊者が自分でカットする。さらにサステナビリティを提案する「TADE GG農園」の豆をローストする「Little Darilng Coffee Roasters」のコーヒー豆を人数分挽き、瓶に入れて持たせてくれた。既に少しだけこのプロジェクトに参加している気分になりながら、香り良いそれらのグッズを持って、いよいよ部屋へと向かった。

ホテルのエントランスに飾られた「HOTEL」という文字に何だか親近感を感じてしまうのは、コレもまた小道具で作られているからだろうか。


各部屋の扉

アーチをくぐり抜けると、天井の真ん中だけがぽっかりと空いた、不思議なスペースが出現。向こう側には部屋の各部屋の扉が見えるのだが、ココ、晴れた日は上を向いて空を眺めることができ、雨の日は床に敷き詰められた石に流れ落ちる雨をアートのように楽しむことができる。雨の多い町の特性を生かし、この施設にはどこにも雨樋を作っていない。雨音に耳を傾けることも、楽しみのひとつにしたのだ。今回の滞在中は雨が降らなかったので、再訪の小さな目的ができた。

右側にロードビューが2部屋、左側にマウンテンビュー2部屋が配置されており、ひと部屋につき4名まで滞在できる。各部屋はキーレスエントリーで、渡されたナンバーを押すことで解錠される。


木目で温かい部屋

部屋の中は天井が高く、清潔感に溢れている。木々に囲まれたような温かみを感じた。どの部屋にも、心柱には上勝の檜が使われていて、よく見ると枝がそのままになっている。聞くと、これも廃材を作らないためだと言う。カーテンは布の歯切れを町内の工房でパッチワークしたもの、そして施設全体と同じく建具が窓として象徴的に天井高くまで配されている。

これまで自分が出していた“ごみ”とは、果たして本当にごみだったのだろうか…。


浴室に置かれたエコストアのシャンプーなど

1Fにはソファを中心にリビングルームがあり、ココで寝ることもできる。デスクの奥には浴室があり、洗面所によくある使い捨てアメニティは一切置かれていない。浴室に唯一置かれているのは、ビープルでも人気の「ecostore」のボディウォッシュ、シャンプー、コンディショナーだけだ。そういえば、宿泊前に施設から、歯ブラシや歯磨き粉は部屋にない旨の注意があった。忘れてしまった方には、販売するというシステムだ。ちなみにナイトウェアの用意もないので、宿泊予定の方はお気に入りのものを自分で持っていって!
そして2Fには寝室として使えるロフトと、余裕のある洗面スペース付きのお手洗いがある。


各部屋の中に置かれたごみバスケット

何よりこの部屋の特徴は、所謂ごみ箱と言えるものがバスケットに入った6つのケースであることだろう。滞在者もごみの分別を体験できるのだ。さらに希望者には、チェックアウト前にスタッフと一緒にステーションで45分別も体験できる。
ごみを捨てる時の大切なポイントやプラスチックごみの見分け方など、丁寧に書かれていた。

宿泊プランには夕食は含まれないので、スタッフの方に相談して、町内にいくつかある飲食店を利用することをオススメする。この日私たちは「RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store」で、クラフトビールで乾杯をし、美味しい食事を楽しんだ。ココのレストランも、ゼロ・ウェイストに取り組む中で、「WHY」と同じチームによって作られた。東京でも体験できるので、是非!


朝食のために芝生に並べてくれたテーブル

朝食は「RISE&WIN」が部屋に届けてくれるのだが、訪問した日は梅雨のど真ん中でありながら、気持ち良いほどに晴れたので、「芝生で食べたい!」とスタッフの方に相談したら、快く青空の下、広い芝生にテーブルを出してセッティングしてくれた。地元の食材を使ったベーグルサンドを楽しくいただくことができた。

これが、環境型複合施設上勝町ゼロ・ウェイストセンター「WHY」の全貌だ。
私たちがこれまで送ってきた大量生産・大量消費の暮らしは、地球に大きすぎる負担をかけている。山や川、海、森といった自然と、多くの生き物に支えられてきたのに、便利さばかりを求め、ごみが増え、そして自然が破壊されていくことになった。今、世界は深刻な状況に直面している。
この事実が、徳島県上勝町という小さな町を奮い立たせ、日本をリードする大きな存在となった。ココを訪れたら、必ず意識が変わるはずだ。

なぜ買うのか、なぜ捨てるのか、なぜ作るのか、なぜ売るのか…「WHY?」

私たちはこの問いかけを、生きている限り続けていく必要がある。そして一人ひとりが何かアクションすることで、一歩ずつ、美しい自然を守ることに繋がるはずだ。
この記事を読んでくださった皆さんも是非、一度上勝町を訪れていただきたい。


私たちを見送った直後のスタッフの方々のリラックスシーン

最後に、この町の取り組みの素晴らしさと共に、町の温かさをお伝えしてこの連載を締めようと思う。写真は、このプロジェクトを先導する、SPEC Bio Laboratory inc.代表・田中達也さん率いる、“チーム・WHY”の方々。彼らの圧倒的なチームワークがあるからこそ、このプロジェクトはきっとまだまだ、もっと大きくなり、間違いなく日本の未来を引っ張っていくだろう。
チームの方々へ、滞在中の豊かな時間と、意識を変えてくれたことへの心からの感謝を。


上勝町ゼロ・ ウェイストセンター WHY(ワイ)
住所:徳島県勝浦郡上勝町大字福原字下日浦 7 番地2
代表メール:info@why-kamikatsu.jp
Instagram:why.kamikatsu

Text by 関 早保子