2020/07/02

WELLNESS

太っているのは恥ずかしい?新時代のインフルエンサーが世界に発信したいこと

From Yogajournal Online(Photo by Christopher Dougherty)

ジェサミン・スタンリーは白人中心で消費者主導型のヨガにうんざりしていた。はきはきとした高い声、SNSでの影響力、豊かな表現力を持つヨガティーチャーで、新時代のインフルエンサーでもある彼女は、誰もがヨガを練習できると世界に向かって宣言している。そして臆さずにその方法を見せてくれる。

時代は中身を求めている

お願いだからヨギと呼ばないで、とジェサミン・スタンリーは言う。ノースカロライナ州出身の31歳のこのヨガティーチャーは、ロンドンでホットヨガを教えている最中にトイレに行きたくなっても退席せずに、シャヴァーサナ中にあえてお漏らしをしたという逸話を持つ。最近は有名になってきたために、スーパーや空港、交通局、道を歩いているときでさえ人に気づかれることに頭を悩ませている。ある生理用品メーカーの広告に出てからは「タンポンのCMのヨガティーチャーでしょう?」と聞かれるようになった。「ねえ、インスタグラムのあのヨギだよね?」次々に声をかけられるときもある。実際、スタンリーのインスタグラム(フォロワーは40万人でさらに増え続けている)は、時には下着でタフなヨガポーズを練習する彼女の写真で人気を博している。


Photo by Christopher Dougherty
 
「ソーシャルメディアで得る名声や自尊心なんて、私が目指しているヨガ的なライフスタイルにはまったくそぐわないわ」と彼女は言う。「だから皆さん、どうか私を放っておいてくれない?」

とはいえ、スタンリーはわずか数年でものすごく注目を集めるようになった。2015年以降は、フォーブス誌(Forbes)、ボナペティ誌(Bon Appétit)、USAトゥデイ紙など無数のメディアに取り上げられ、昨年からはニューヨークタイムズ紙でのヨガQ&Aの回答を担当している。ポッドキャスト「Jessamyn Explains It時代は中身を求めているAll」はセカンドシーズンに入り、さらにはマリファナの合法化や一夫一婦制の欠点など、タブー視される政治色の強い問題に取り組むウェブシリーズを立ち上げようとしている(初回のゲストはヨガティーチャーでボディポジティブの提唱者であるダナ・ファルセッティの予定)。


Photo by Christopher Dougherty

スタンリーは人々が自分に注目するのは、太った黒人女性がタフなアーサナに挑むのを見慣れていないせいだと思っている。アメリカのヨガは「白人優位主義に深く根ざしている」と彼女は言う。西洋社会の近代ヨガや、彼女曰く「男性視点での白人主体の美の基準」による迫害やボディシェイミング(体型中傷)に対し、スタンリーは辛辣に批判している。彼女は自身のインスタグラム(「細い子が太ってる子に興味を持ったり友達になりたがるなんて変な話ね(2018年8月投稿)」)や、2017年に出版した自著『Every Body Yoga』、さらに日常の会話でも、常に自分を太っていると言う。そうすることで、太っているイコール恥という一般的な概念を払拭したいからだ。その目的のために、彼女は活動家として自身の姿を人前に出し、世間のヨガ体型への思い込みを取り払い、ヨガクラスにそぐわないと思っている人たちに勇気を与えようとしている。


Photo by Christopher Dougherty

スタンリーがインスタグラムを始めたのはファットヨガのイメージキャラクターになるためではなく、2012年から始めた家でのヨガ練習へのフィードバックを得るためだった。多くのヨガ練習生と同様に、彼女も透明人間になりたいと思いながらクラスの隅っこでレッスンを受けるのが苦痛だったからだ。今の彼女とはまるで逆だった。

だが当時のスタンリーはノースカロライナ大学の芸術学部を中退し、不安で自分を見失っていた。そこで、安全な自分の居間でヨガの練習を始めた。『ヨガジャーナル』のポーズ集や、キャサリン・ブディグやエイミー・イッポリティのオンラインクラスを利用しながら、練習の進み具合をオンラインで綴っていた。

「たくさんの人から反響はあったけれど、練習へのフィードバックではなくて、太っている人もヨガができるとは思わなかったというコメントばかり。だからこう返したの。なぜ太っている人はヨガができないって思うの?太っていたって、いつでも何でもできるのよってね。きれいなだけじゃない本物のヨガ練習を伝えられる絶好のチャンスだと思ったのはこの時よ」と彼女は言う。


くつろげる家がスタンリーの練習の支えとなっている/Photo by Christopher Dougherty

2015年3月にノースカロライナ州アッシュビルで200時間ヨガティーチャートレーニング(YTT)に参加する頃には、彼女のSNSのフォロワーはかなりの数となり、メディアからも注目されていた。同じ年の1月、People誌は「インスタグラムのヨガアイドルになった、2万9000人のフォロワーを持つ自称ぽっちゃり女性」として彼女の記事を掲載した。その記事の中で、彼女はYTTに参加するのに必要なお金をクラウドソースで集めたいと語っていた。「どうしても必要なのです」と当時彼女は話している。「人々は自分に似ている誰か、あるいはほかの誰にも似ていない誰かが、やるべきことを示してくれるのを望んでいるからです」

ある10月の朝、彼女がパートナーと3匹の猫と暮らすダーラムの自宅で、私たちはテーブルを挟んでチュロスを食べてラテを飲んでいた。するとスタンリーは、ヨガティーチャーになる気はまったくなかった、と話し始めた。「たくさんの人からティーチャーになってと言われたわ」と彼女は当時を振り返る。「でも誰かに教える必要性を感じていなかったの」。代わりに彼女は、ファンたちが住む地域のおすすめのヨガティーチャーを調べて、教えてあげていた。だがヨガ界への進出を反対していた父親が、突然トレーニング費用の寄付集めを申し出てくれた時、初めて彼女はヨガを教えることを真剣に考え始めた。「両親には3000ドルを出す余裕はなかったわ。その父が断固として立ち上がるのを見て、何か大きな力が動いていると気づいたの」


スタンリーはホームプラクティスを7年間欠かさず続けている/Photo by Christopher Dougherty

スタンリーは、YTTの前と後では人生がまったく変わったと話す。「YTTの間は、魂の殻が割れて開かれるような経験を何度もしたわ。自分自身から目を背けていたことがたくさんあった。人々に何かを伝えることとは、練習を誠実に実践し、自分の中の醜くて暗くて複雑な部分をできるだけ明らかにして、それを人々に示すことだとわかったの。私にとって、ティーチングとはそうあるべきなの。キャリアというよりも、使命なのよ。天職なの。人生の課題ね。トレーニングを終えた時、こう思ったの。さあ、私を待っている人たちに、手を差し伸べる時が来たわ」そして彼女はそれを実行した。

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出典:太っているのは恥ずかしい?新時代のインフルエンサーが世界に発信したいこと
https://yogajournal.jp

Story by Lindsay Tucker
Photos by Christopher Dougherty
Translation by Sachiko Matsunami
yoga Journal日本版Vol.64掲載