2020/04/20

INTERVIEW

獣医師から薬草ハーバリストへ|加藤美帆さんの転身ストーリー

From Yogajournal Online(Photo by Miho Kato - suu )

薬草の効果や効能をライフスタイルに生かすための提案を行う「薬草ハーバリスト」として活躍する加藤美帆さん。野草茶の魅力に取りつかれ、立ち上げたブランドは海外からも支持されています。企業、カフェやサロンのドリンクプロデュースなど活躍の場を広げ続ける彼女の軌跡とは。

獣医師から「薬草ハーバリスト」へ

お茶を注ぐと、よもぎが香り、ハーブがやさしくよもぎに寄り添い、共鳴する。飲み終えたころには、胸の奥がじーんと温まっている。心にまとっていた鎧が、すっと静かに解けていく…。その余韻は、ヨガを終えた後の心身がほぐれていく感覚と、どこか似ているように感じます。


welcome-tea  - suu -

この不思議な味がするよもぎ茶を作ったのは、福岡県糸島市で「薬草ハーバリスト」として活動する加藤美帆さん。2014年に移住し、わずか3年で自身のブランド「- suu -(スー)」を立ち上げ、世に広め続けています。

―――ハーバリストになる前は、どんなお仕事をしていたのですか?

大学卒業後は獣医師として、毎日たくさんの動物の命と向き合っていました。夜勤や急患の対応で、休憩も満足に取れないのは日常茶飯事。慢性的な寝不足、不摂生な生活で疲れきってしまい、仕事以外のプライベートな楽しみは無いも同然でした。獣医師は子供の頃からの夢だったはずなのに、やりがいに対して負担が大きすぎたのだと思います。

変化が訪れたのは、結婚を機にサンフランシスコへ移住し、知人が立ち上げたITベンチャー企業で働き始めた頃。初めて携わるビジネスの世界は、膨大な求心力とエネルギーが渦巻いていました。


糸島への移住から数年後に飼い始めた愛犬と/ - suu -

―――仕事に邁進していたのですね。なぜ、移住するという考えに至ったのですか?

以前の私は「他人軸」で物事を判断していました。「これでいいのかな?間違っていないかな?」と周囲を気にするあまり息苦しさを感じることも。でも、生き方は一つじゃないんですよね。サンフランシスコで出会った人々は、誰もがパワフルに自分らしく生きていて…。そんな彼らを見て、あるがままに生きる素晴らしさに気づいたんです。

「~しなければならない」ではなく「~したい」を判断基準にしてみたら、生き方の答えが自分の中にあるように思えました。「自分の道や愛するものは自分で選んでいい。そして、愛せないものは無理に選ばなくてもいい」…そんな風に自分自身を許してあげたら、モノクロだった世界が鮮やかに色づき、次々に人生の扉が開いていくような感覚を覚えましたね。

そして出した答えが、福岡県糸島市への移住という道。正直、糸島には縁もゆかりもないんですけどね(笑) でも、この美しい土地に惹かれるものがあったんです。


糸島の海 - suu -


糸島の海の夕暮れ - suu -


糸島の森 - suu -

―――導かれるままに糸島へ。ライフスタイルはどのように変わりましたか?

日々、野歩きの毎日です! 都会にいた頃は便利さと同時に忙しなさを感じていたので、糸島での自然にあふれた暮らしは非常に魅力的でした。物事の視点や心の在り方が変わり、本当の豊かさを感じられるようになりましたね。

―――野歩きとは、具体的にどのようなことをするのですか?

糸島の山々を歩きながら、その日食べたり飲むための植物、お風呂に入れる植物、薬になる植物を探します。丸一日、ひたすら薬草を探していることもありますよ。

同じ山の中であっても、朝や夜、晴れの日や雨の日…その日その時間帯によって出会える植物が違うんです。必要な薬草を採りに行くのではなく、その時々の巡り合わせを大切にしていますね。出会えた植物に「ありがとう」という気持ちで、いただいています。


薬草つみ - suu -


ハーブとスパイスの足湯 - suu -

―――移住後、薬草と出会うきっかけは?


移住したばかりの頃は、薬草の魅力を知りませんでした。ある日、飼い犬と家の周りを散歩していると、ふと足元に広がる植物たちが目についたんです。次第に、毎日くるくると表情を変える植物に愛着が湧き、足元に広がる美しいものの魅力に引き込まれていきました。

そういえば、子どもの頃は渓谷や多摩川が近い地域に住んでいたんです。その時に自然と触れた経験や、獣医師のころに学んだ自然科学や薬学の知識をもとに、直感的に「目の前にある植物で何かをしてみたい」と思うようになったんです。

―――なぜ、薬草ハーバリストをになったのですか?

植物と向き合い始めて間もない頃、当時の自分でも判別できる「よもぎ」をお茶にしてみたら、びっくりするほど美味しかったんです。その発見をきっかけに、植物に対する探求心が開花しました。


薬草茶 - suu -

その後は、朝から晩まで、植物を見つけては成分や効果を調べていました。例えば百人一首に登場する植物や、一般的な薬の原材料になる植物、有名メーカーのコスメに使用されていたエキスの正体…調べれば調べるほどたくさんの発見がありました。また、自分で七草を摘んでみたり、体調に合わせて薬を調合してみたり、コスメや食事を作ってみたり…好きなことに没頭する毎日が、楽しくて楽しくて仕方ありませんでした。


薬草と薬草花の酵素シロップ作り- suu -


薬草コスメ作り - suu -


摘みたての薬草ごはん - suu -


薬草酒いろいろ - suu -

―――「好きなこと」がビジネスに変わるきっかけは何だったのでしょうか?

自分で作ったものを、周囲におすそ分けしていたんです。すると「これを作ってほしい」という要望を受けるようになり、自然と薬草ハーバリストとしての活動を始めるようになりました。特に評判を呼んだのは、よもぎと西洋ハーブをブレンドしたお茶。これを販売してほしいという声を受けて、「 - suu -」を立ち上げることに決めました。

―――自分らしさを追い求めた結果、今があるのですね。最後に、加藤さんにとって「生きる」とは?

自分らしくあること、自分が何に感動するかを知ることだと思います。私は自然との出逢いを通じて、自分が何に感動するのかを知りました。新月から満月へ移り変わっていく様子や、植物が芽吹いては花が咲き、枯れてゆく…そんな移ろいや営みに心が動くのです。

何に感動するかは人それぞれですが、大切なのは、自分の心が何に動くかに気づくことです。そして、ありのままの自分自身でいること。そうでなければ自分の心の動きをすくい上げることはできません。日常にちりばめられたさまざまな変化を楽しむ。そんな感動がある日々をこれからも過ごしていきたいです。



月の巡りに合わせたお茶、オーダーメイドブレンド - suu -

加藤美帆さん


薬草ハーバリスト/獣医師 - suu -代表 1986年東京生まれ、ニューヨークの田舎育ち。都内で獣医師として勤務後、東京・カリフォルニアのITベンチャーを経て、糸島へ移住。動物たちとともに、山に囲まれた海辺で暮らす。2017年、[月の巡りと薬草暮らし]をテーマに、薬草と暮らしのブランド - suu -を設立。無農薬のよもぎ茶をひとつひとつ手づくりする傍ら、糸島での薬草リトリートや、薬草暮らしのワークショップ、コラム執筆、よもぎのボトルドティーの開発などを行っている。

HP:tea-suu.com instagram:instagram.com/tea.suu/


ライター/君嶋瑠里
2017年、会社員の仕事で心身共に疲弊していた頃、インストラクターの友人の紹介がきっかけで知った綿本彰氏のスタジオを訪れ、師事する。パワーヨガ、ラージャヨガ、その他様々な瞑想法を学び、2018年、指導者養成講座を修了しヨガインストラクターに。日常に活かせるヨガをテーマに実践中。2018年日本ヨーガ瞑想協会講師登録。2019年全米ヨガアライアンスRYT200取得。ヨガスタジオ、ホットヨガスタジオ、スポーツクラブ、公共施設にて指導。



出典:獣医師から薬草ハーバリストへ|加藤美帆さんの転身ストーリー
https://yogajournal.jp

Text by 君嶋瑠里

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