2020/03/18

REMEDY

SNSの先駆者・安藤美冬(miffy)さんが、デジタル離れした理由とは?

Photo by Shutterstock

ノマドワーカーの元祖でもあり、作家・コメンテーターとして活躍している安藤美冬さんことmiffyさんの全3回コラム連載がスタート。今回は、miffyさんが2年以上デジタルから離れた理由を語ってもらいました。

今の時代、人々にソーシャルメディアは欠かせないものとなり、精神的にも身体的にも、私たちのライフスタイルに良くも悪くも大きな影響を与えています。
利便性だけではなく、『SNS依存症』や集中力低下など、あらゆる危険性も秘めているのは確かです。
かといっていきなり全てを断つことは、難しいはず。ビープルでは “SNSとの上手な付き合い方” を、SNS先駆者でもある安藤美冬(miffy)さんに教えてもらうべく、コラム連載がスタート。
miffyさんは大手出版社勤務を経て独立後、フリーランスに。働く拠点をひとつにしない “ノマドワーカー” を提唱し始めた一人でもあり、BlogやFacebook、Twitterを駆使して情報発信。その働き方が世間から注目を集め、TBS番組『情熱大陸』にも取り上げられました。そんな彼女が、2年間ほどSNSからきっぱり離れ、それまでとは真逆の脱・デジタルな生活をしていたとか。その理由とは?

私がSNSから離れた理由



SNSの存在は、私たちの生活を大きく変えています。

SNSの役割には、「コミュニケーション」「情報収集」「情報発信」という3つの役割があります。中でも、SNSが果たした特筆すべき役割は「情報発信」でしょう。

YouTube、Instagram、Twitter、Facebookやブログらによる情報発信で多くのファンや共感を集めることによって、有名になったり、影響力を持ったり、収入を得たり、自分の志やライフスタイルを同じくするコミュニティを形成したり。自分らしいあり方を表現することによって、様々なかたちで成功する人たち、充実感や生きがいを感じている人たちが、2010年代急増しています。

20世紀までは、こうした情報発信機能はマスメディアと一部の有識者、有名人が担っていました。
今では一個人が芸能人顔負けの人気を集めます。数万〜数百万人ものフォロワーがいる彼らは、愛用する商品が飛ぶように売れ、時に世論に影響を与えることもあります。

今や小学生のなりたい職業がゲーム実況者やYouTuberなのも、YouTuberという存在がすっかりお茶の間に浸透し、しかも「職業」として子どもたちの間でも認知されている証です。しかも、世界でもっとも稼ぐYouTuberには10歳にも満たない子どもたちがいるといいます。



私も、SNSとともに生きてきました。
出版社で働く正社員からフリーランスの個人として所属を変えた2010年から、主にTwitter、Facebook、そしてブログの3つのサービスを使って情報発信という ”表現活動” を続けてきました。

最初は私が興味のあることを雑多に投稿していたのですが、途中で「情報発信によって仕事をつかもう」と、熱心に投稿していった結果、SNSによって仕事を得るワークスタイルや、パソコンやスマホを駆使して自由に働く個人としてのライフスタイルに注目されるようになったのです。

次第に私が発する言葉はネット世界を離れ、あらゆるテレビ、新聞、雑誌やラジオ、Webなどのマスメディアでも連日取り上げられるようになりました。「SNSを駆使して自由に働くフリーランス」として某ドキュメンタリー番組に出演した際は、賛否両論を巻き起こす大反響となっただけでなく、海外にも影響が及びました。
中国、台湾、香港、韓国などアジアをはじめ、北欧まで飛び火し、たくさんの取材依頼を受けたのです。きっかけは、出演したテレビ番組動画がネットで拡散され、拡散されるうちに各言語に翻訳されたからだそうです。これらも、SNS時代だからこそ起きる現象だと思います。

たった一つのつぶやき、記事に思いを乗せて、その投稿がまるで大河の一滴のように、波紋をじわじわと広げていき、たくさんの人たちの意識を喚起していく。個人でも、社会に対して何かができるんだ、そんな可能性に勇気づけられました。
一方、何年もSNS世界に浸るうちに、違和感も感じはじめました。


気づかぬうちに抱えているSNS疲れ



「つながり疲れ」という言葉があります。いつでも、どこでも人とインターネットを介してつながることで生じるストレスのことです。

SNSで誰でも情報発信できるということは、裏を返せばいつも誰かに動向を「監視」されているということ。
何をしているのか、何を考えているのか、どんな人とつきあっていて、どんな生活を送っているのか他人からお見通しです。個人情報を悪用される可能性もあるし、思わぬところで足元をすくわれたり、「炎上」したりするリスクを孕んでいます。

また、情報発信をコントロールし続けることのしんどさもあるでしょう。他人からまる見えだからこそ、よく見せようとするのが人間というもの。
承認欲求を満たそうとして「実際以上」になろうとすればするほど、自分とのギャップに悩む人もいます。また、承認欲求を満たそうとする行動は、不思議と他人にはそれと分かるものです。

自撮り写真を、原型を留めないほどに加工してアップする。人に見られているからと当たり障りのないコメントをしてやり過ごす…。こうしたことに率直な疑問を感じ始めた海外のインフルエンサーの中には、あえてすっぴんをさらしたり、本心をさらけ出したり、型にはまった「理想の生活」を発信し続けるのをやめて ”舞台裏” を暴露したりする人も出てきました。
これらはあまりにも “リアル” からかけ離れてしまったことによる、「揺り戻し」現象なのかもしれません。

情報受信による悩みもあります。
SNSは、これまで見えなかった他者が見えるようになることです。
調子が出ないとき、落ち込んでいるときにキラキラとした他人を目にすることだってあります。同世代ですでに人気者だったり、夢を叶えていたり、幸せな家庭を手にいれていたりする人を見て、思わずもやもやしてしまったことは、誰もが少なからず経験しているのではないでしょうか。

また、様々な人の発信をフォローしているために、タイムラインが彼らの日常、情報で溢れてしまいます。気づいたら1日何時間もスマホを眺めて過ごしてしまう。これでは、外側で起きる情報や出来事に一喜一憂しているうちに、すっかり自分がおろそかになってしまいかねません。
 
これらは私自身にも起きたことです。
また、たくさんの人に発言や発信が届くようになり、これまでになかった思わぬ反論や批判を受けるうちに、自分が正しいということを認めさせようとする、そんな躍起になっている自分に気づきはじめました
こんなことを続けていては、自分らしい本来の素顔から遠く離れてしまうばかりです。

子どもの頃、私は学校の内外で起きた出来事を自作の「安藤家新聞」にして、家族や祖父母に見せていました。
子どもながらに、自分の書いた文章が人に読んでもらえて、何よりも楽しんでくれる、それがとっても嬉しかったのです。

あの頃の気持ちが、どうやって戻ってくるのだろうか。
もっとのびのびした気持ちで、楽しいことや、面白いと思ったことを、ユーモアとナチュラルな感性で発信できたらいい
私が理想とするSNSとの付き合い方や距離感を、もう一度じっくりと築き直してみたい。



そんな思いから、段階的にSNSをやめ、”リアル” な世界だけで生きることにしたのです。
SNSデトックスの期間は、2年以上になりました。
 
ネットから遠ざかったばかりの頃は、”表現活動” する場がなくなり、都会の真ん中でひとりぼっちになったような気持ちになることもありました。私だけ立ちどまり、まるで周囲は新幹線のような速さで動いている、そんな風に感じた日もあります。
そうかと思うと、このまま他人の目にさらされることのない平和な日々を過ごすのも悪くないな、と思う日もありました。
情報というノイズから逃れて、私は私と二人きりになれる
静かな時間を過ごしていくうちに、人から認められたいとか、勝ちたいとか、そうした欲がどんどん薄れていって、大好きな家族である猫との時間や、朝飲む一杯のコーヒーのおいしさ、電車から見える東京の美しい日常の風景にじんわりと涙が出てくる、そんな時間が増していきました。



私はSNSが人々にもたらす、素晴らしい世界を信じています。SNSは夢を叶えるツールであり、他者とのつながり感をもたらすものです。
同時に、人々が傷ついたり、争ったりする世界の舞台にもなります。

では、私たちはSNS時代をどう生きればいいのでしょうか。

SNSを扱う私たち人間に思考、感情、欲望がある以上、ただSNSそのものを知るには足りません。私たち人間の心と、自分自身に目を向ける必要があります

このコラムは、今まさに情報発信を頑張っているあなた、ネットとのつながりにすっかり疲れてしまっているあなた、そしてSNSとの新たなステージを模索しているあなたのためにあります。

SNSというものを通して自分を問い直してみたい、すべての人の「生きるヒント」になれば幸いです。

ーー
つながりたいゆえに始めたのに、SNSによる「つながり疲れ」が起こる。それは多くの方が感じたことではないでしょうか?
次回は、「SNSをやめたら起きたこと」をお話いただく予定!




安藤美冬(miffy)
1980年生まれの情報発信者、著者。慶應義塾大学在学中にオランダ・アムステルダム大学に交換留学を経験。株式会社集英社勤務を経て独立。SNSから2年ほど離れた充電期間を経て、2020年春から本格的に発信活動を再開。ただいま音声配信アプリhimalayaにて、人生相談コーナー「miffyのコーヒーブレイク」を毎朝7時に配信中。「情熱大陸」「NHKスペシャル」などメディア出演多数。著書に『冒険に出よう』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『未来を動かす』(Voice)、『ビジネスパーソンのためのセブ英語留学』(東洋経済新報社)、『会社を辞めても辞めなくてもどこでも稼げる仕事術』(SBクリエイティブ)などがある。

公式ブログ
毎朝7時、音声配信中

Text by 安藤美冬、Photo by Shutterstock

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