2021/12/26

BEAUTY

毎年繰り返す、冬の乾燥による肌ダメージ。どうケアすればいい?

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寒い冬は乾燥して肌がカサカサに…。乾燥から肌を守るには?冬の乾燥スパイラルの対処法について、形成外科専門医の西嶌順子先生に教えてもらいました。

――まず冬の乾燥によって、なぜ肌ダメージを受けてしまうのでしょうか?そのメカニズムを教えてください。
「冬になると乾燥するのは、
① 湿度の低さ
② 気温の低さ
③ 循環の低下
が大きな原因です。湿度が低くなり空気が乾燥すると、水分を多く含む肌と空気の間で水分量を同じにしようとする力が働き、肌の水分を蒸発させてしまいます。さらに乾燥が進む原因となるのがエアコン暖房の使用です。例えば室温5℃で湿度50%の部屋を、加湿なしで20℃まで温めると湿度が20%くらいになってしまいます。暖房を使うと室温が高くなり、飽和水蒸気量が増えます。加湿機能のないエアコン暖房は、空気を直接暖めることで部屋全体を上げるので、水蒸気は発生しません。つまり空気中の水分は増えずに、温度だけが上昇するため、湿度が低下して乾燥を引き起こしてしまいます。」

――エアコン暖房をつけたら、同時に加湿が必要ですね。
「そうですね。乾燥を防ぐには、加湿器はあったほうがいいです。室内に洗濯物を干しても。冬場の最適湿度は40〜60%が目安です。乾燥対策では50〜60%がおすすめです。一方で60%ではカビやダニが発生しやすくなってしまうのでご注意を。
そして気温の低さですが、ヒトの体温は外気に影響を受けずほぼ一定に保たれていますが、皮膚温は外気温によって変化します。気温が低下すると汗の量が減り、皮脂分泌量も減ります。汗と皮脂は肌のバリア機能を担う皮脂膜を作り、角質の水分の蒸発を防いでくれるもの。この分泌が減ると皮脂膜が形成されにくくなり、この結果、肌内部の水分が失われやすくなるんです。」

――循環の低下というのは?
「外が寒くなると私たちの身体は、皮膚からの熱の放散を抑えるために皮膚への血液循環を減らし、脳や心臓などの中心部分に集めていくんです。そうなると肌の新陳代謝が低下しやすくなったり、老廃物が蓄積しやすくなります。新陳代謝が遅れると肌が自ら作り出す保湿成分が作られにくくなり水分が蒸発しやすくなるので、乾燥が進んでしまいます。」

――これらの原因から肌を守るにはどうすればいいのでしょうか?
「冬の乾燥しやすい時期は特に、乾燥対策をする以前に肌のバリア機能を正常に保つことが重要。肌のバリア機能は外的刺激から肌を守り、肌内部の水分蒸発を防ぐ働きをしています。このバリア機能を正常に保つためには、まず洗い過ぎに気をつけましょう。クレンジング料や洗顔料に使われていることが多い合成界面活性剤の中には、強すぎて肌にダメージを与え、バリア機能を低下させてしまうものもあります。
クレンジング剤を使わず石鹸で落とせるようなメイクをしたり、石鹸も低刺激な純石鹸を使ったり、泡立てネットでよく泡立てて、肌を擦らないようにするのも大切。過剰な摩擦はメラノサイトを刺激しシミや色素沈着につながることもあります。顔を拭く際も、清潔なタオルで押さえつけるように拭きましょう。また洗い方としては、Tゾーンやあごなど皮脂が多いところから泡をのせ、1分以内など短時間で終わらせること。そして、汚れを落としながらもうるおいを逃さないぬるま湯ですすぐこともポイントです。」



――洗い過ぎはよくないとのことですが、朝晩どちらも洗顔することもあまりよくないのでしょうか。
「朝も洗顔料や石鹸を使い洗顔をすると、皮脂や美肌菌も少なくなってしまうため、朝は水やぬるま湯のみで洗うのがベスト。乾燥肌でもTゾーンなど部分的に皮脂が気になる場合は、その部分のみ洗顔料を使用するといいです。ただニキビがひどい場合や皮脂の分泌が多すぎる場合は、朝も洗顔料を使うほうがよいこともあるので、かかりつけの皮膚科医の先生に聞いてみることをおすすめします。」

――そのほかスキンケアで気をつけるべきことはありますか?
「バリア機能が整っている肌なら、肌そのものに保湿力が備わっているので、ワセリンやオイルで蓋をして水分の蒸発を防ぐだけでも十分なんです。バリア機能が壊れている場合は、化粧水で水分を補う必要がありますが、やがて蒸発してしまうため、化粧水のあとにセラミド入りのアイテムを使うことをおすすめしています。セラミドは、肌の角質細胞の間を埋める『細胞間脂質』の約4割を占めるといわれており、肌のうるおいに欠かせない保湿成分です。」

――スキンケア以外で対策できることはありますか?
「うるおいのある肌をキープするには、スキンケアだけではなく体の内側からのケアも必要です。まずは寒い冬場もまめな水分補給はしましょう。一度にコップ一杯(250ml程度)以上飲んでも、尿として排泄されてしまうため、タイミングを決めてこまめに飲みましょう。例えば、
・朝起きた時
・通勤などで歩いた時
・一息ついて休憩したい時
・スポーツした時
・入浴前後
・就寝前
など、自分でタイミングを決めておくと忘れずにすみます。カフェインやアルコールは利尿作用があり、たくさん飲んでも飲んだ以上に排泄してしまうため、カフェインを含まない物やお水で補給してください。体を冷やさないために、できれば常温か温かい飲み物がいいです。」

――ボディケアで気をつけることはありますか?
「化学繊維の服は吸湿性が低く静電気が発生しやすいですし、ヒートインナーは逆に肌の水分を吸収し発熱してしまうため、乾燥している肌、アトピー肌の方は湿疹が出たりかゆみが出ることも。下着やインナーはオーガニックコットンやシルクなど肌にやさしい素材を使うことをおすすめします。また、ボディも洗い過ぎは禁物。乾燥を感じるならば、皮脂を失わないためにも石鹸やボディソープで洗わず、熱すぎないお湯のみで洗うのがベストです。熱い湯での入浴、長湯は皮脂だけでなくバリア機能を持つNMFや細胞間脂質を流出させてしまうことがあるので避けましょう。お湯の温度は冬でも38〜40度に設定しておくと乾燥対策にはよいです。また、入浴時の残留塩素が肌への刺激になることもあるため、塩素除去剤をお風呂に入れたり、塩素除去できるシャワーヘッドを使用するのも一つの乾燥対策になります。」

――体の内側からのケアも大切とのことですが、食事で意識したほうがよいこともあるのでしょうか。
「肌のバリア機能を正常に保つことが大切なので、冬に限らず一年中、健康な肌づくりのための食事は意識するとよいです。肌の原料となるタンパク質、肌にうるおいをもたらすビタミンA、肌の生まれ変わりを促すビタミンB2やビタミンB6、バリア機能の維持に欠かせない必須脂肪酸などの栄養素が重要です。」

――乾燥しているから保湿をするのではなく、肌本来が持つ機能を発揮させることが大切なんですね。
「そうなんです。肌内部の保湿力を上げるためには腸内環境を整えたり、良質な睡眠をとることも大切です。また、電磁波も肌へのダメージを与えます。帯電による血液循環の悪化、ブルーライトによる光老化、自律神経の乱れによる不眠や免疫力低下なども肌へのダメージにつながります。寝る前はPCやスマホを控えたり、ブルーライトカットメガネをしたり、適度な運動、ストレッチをして循環をよくするなど、日常的に電磁波から体を守ることも意識してみましょう。」

――それでも改善しない場合はどうすればいいのでしょうか。
「その場合は保険診療を行なっている皮膚科クリニックで診てもらうといいと思います。また、生活習慣を工夫したインナーケアが難しい場合は、サプリメントを活用するのも手。いずれにせよ肌の回復には時間がかかるため、状態がひどい場合はすぐに結果を求めるのではなく最低でも6カ月間は頑張ってみましょう。」

乾燥から肌を守るためには、肌の中と外からのケアが必要!冬の乾燥対策だけでなく、普段から肌のバリア機能を高めることが重要だということがわかりました。
ご自身の肌の状態を見ながら、うるおい肌を目指してケアしてみてくださいね。




恵比寿形成外科・美容クリニック院長

西嶌 順子先生
1978年、東京生まれ。形成外科専門医。助産師、保健師、看護師。「医療法人道心会 恵比寿形成外科・美容クリニック」院長。聖路加国際大学看護学部卒。北里大学医学部卒。専門医と2児の母の立場で女性特有の悩みへの情報を発信中。夫の西嶌暁生医師と株式会社ZAIを立ち上げ、サプリや化粧品の開発も手掛ける。

Text by Sonomi Takeo