2021/11/21

TRAVEL

旅先で食の未来を考える|「星野リゾート リゾナーレ那須」が目指す新しいリゾートのかたち

観光だけじゃない、体験型のリゾートが急増中。「星野リゾート リゾナーレ那須」では、親子で農業体験できるなど、食の未来を学べるプログラムを用意。今回はその様子をレポートします!

栃木県にある「星野リゾート リゾナーレ那須」は、「アグリツーリズモリゾート」という一風変わったコンセプトを掲げています。
これはイタリア語で「農業(アグリクルトゥーラ)」と「観光(ツーリズモ)」が合わさった造語で、ゲストはアクティビティを通じてさまざまな農業を体験できるというもの。実際、敷地内には野菜やハーブを育てる畑や温室があり、年間120種以上を栽培。毎朝開催する「ファーマーズレッスン」では、宿泊客が種まきや収穫を体験でき、野菜と農業に触れ合う機会を提供してくれます。



さらにリゾートホテルでは珍しく、敷地内には広大な田んぼもあります。2021年から始まった「お米の学校」というプロジェクトでは、稲作のカレンダーに合わせて田植えや稲刈り、脱穀、炊飯体験などを体験することが可能。小学生以上の宿泊客であれば誰でも参加でき、思い出づくりと子どもへの“食育”を兼ねて、親子で一緒に参加している方も多いそう!



リゾナーレ那須がこのような取り組みを進める背景には、「日本のお米消費量が減少するのを少しでも食い止めたい」という想いがあるようです。
昭和40年に約312.3万ヘクタールあった田んぼの総面積は平成28年には約147.8万ヘクタールに激減。日本の原風景である田んぼを守るべく、地元農家にも協力を仰ぎながら、“日本初のアグリツーリズモリゾート”として日本の米食文化を繋いでいく――。
そんなリゾナーレ那須の熱意ある活動に、宿泊客も未来の食卓を考えるきっかけをもらい、ここにホテルステイの枠を超えた“価値ある宿泊体験”があるのは間違いありません。



またリゾナーレ那須は、コロナ禍のため行き場を失った生乳のフードロス問題を解決する活動にも積極的に取り組んでいます。
昨年、学校給食や外食産業において牛乳や乳製品の消費量が低下する中、生乳は乳牛の病気予防のために毎日搾乳し続ける必要があり(短期的に生産量のコントロールができない)、このままだと廃棄せざるをえないという問題が生じました。そうした搾乳済みの生乳を乳製品として加工し、ホテルゲストがおみやげやスイーツとして楽しめるよう商品化したのが「星野リゾートのミルクジャム」です。



栃木県那須町にある「森林ノ牧場」では希少なジャージー牛を飼育しており、香り高く味が良い生乳が特徴でした。これを、星野リゾートで勤務する浜田シェフは、フランス料理で研鑽を積んだ腕前を生かし、焦がす直前まで煮詰めることで甘すぎずキレのある味を引き出すことに成功。濃厚な生乳の風味を閉じ込めた、グルメなミルクジャムの製品化に至りました。
実際、 こちらのミルクジャムを使ったミルクジャムフラッペは、リゾナーレ那須でメニュー化されており、ひと口飲むと口内にミルクジャムの香りが広がり、紅茶やミルクとの相性も抜群!またミルクジャムはパンに塗って食べてもおいしく、おみやげにもぴったりの商品に仕上がっています。



星野リゾートのホテル以外でも、栃木県JR黒磯駅前にある図書館「みるる」内のカフェ「モリコーネ」で、こちらのミルクジャムを使用したソフトクリームやドリンクをいただくことができます。
食を守り、地域の活性化にも繋げるリゾナーレ那須の試みこそ、サステナブルな活動ではないでしょうか。
日本初のアグリツーリズモリゾートが誕生してから2021年11月でちょうど2年。今後の取り組みがますます楽しみです。


星野リゾート リゾナーレ那須
栃木県那須郡那須町高久乙道下2301
0570-073-055(リゾナーレ予約センター)

Text by Keiichi Izawa