2021/07/23

INTERVIEW

【湘南PEOPLE】女優・桃生亜希子さん「健康のために我慢するより、ちょっとの毒も楽しめる人生でいたい」

今回の「湘南PEOPLE」は、葉山在住の女優・桃生亜希子(ものう あきこ)さんにインタビュー。ファッショナブルでパワフルな印象の亜希子さん。彼女のハッピーマインドは一体どこから来ているのでしょうか?

——亜希子さんは結婚前、NYに住んでいらしたことがあるんですよね?何をきっかけに移住したんですか?
「15歳の頃、家庭教師の先生がNYへ連れていってくれたんです。そのとき、NYのエネルギッシュさというか、強いパワーやバイブレーションを感じて。とても刺激的だったんです。その後も、高校生のときにお付き合いしていた彼がNYへ仕事で行ってしまって遠距離恋愛をしていたのもあり、NYへは頻繁に行っていたんです。たくさんの出会いがあって、ファッションショーに出させてもらったり、ショートフィルムを撮影したりもしたり、いろんな経験をさせていただきました。本当にただただ、楽しくて。

旅が好きなので、これまでいろんな国を訪れましたが、NYのエネルギーはとても自分に合うように感じています。『NYに住む』という憧れはずっとあったんですよね。ただお仕事もあったし、なかなか踏み切れなかった。そんなときに、3.11東日本大震災が起きたんです。そのとき、『人生一度きりだし、明日何が起こるかわからない』と気づかされて。そこで思いきってお仕事を長期でお休みすることにして、NYへ移住しました。そして、いまの旦那さんに出会ったんです。いま思えば、彼に出会うことも運命だったんだろうなぁと思います。」


NYに住み、旦那さんと出会って過ごした日々

——NYから葉山へ戻ったのはなぜだったんですか?
「NYで暮らして10カ月が過ぎた頃に妊娠がわかって。旦那さんは日本人ではなくハワイ出身なので、そのままアメリカ圏に住むのも選択肢にあったんですが、二人で相談もして、やっぱり子どもを育てるなら日本が安心かなと思ったんですよね。NYは物価も高いし、日本のほうがライフラインもととのっている。そこで最初は東京にある実家に住んで、出産しました。生まれは葉山なのですが、何回か引っ越しをしていて、当時、両親は東京に住んでいたんです。しばらくして、人に貸していた地元の葉山の家に住めることになり、リノベーションして家族で移り住むことになりました。それがいまから5年前です。」


リノベーションした葉山のご自宅にて

——NYと葉山だと雰囲気も真逆というか、全然違いますよね。戻ってみてどうでしたか?
「やっぱり落ち着きますね。すごく穏やかな空気で、自然もたくさんあるし、子育てするには最高だなって。ファミリーは特に暮らしやすいと思います。小さい頃、何か学校でイヤなことがあっても葉山の自然の中にいるとすぐに忘れちゃうんですよ。とても恵まれた環境だったように思えます。」


亜希子さんにとって海はパワースポット(写真は沖縄県・西表島にて)

——葉山でのライフスタイルについて、何かルーティンにしていることがあれば、ぜひ教えてください!
「朝起きたらまずカーテンを開けて、太陽の光を浴びたらご先祖様にご挨拶とお祈りをします。それから15分ほどヨガをして、そのあと瞑想も15分。たまにオラクルカードもひきます。オラクルカードってポジティブなメッセージしかないので、楽しいんです。それから一日が始まる!という感じですね 。


数種類持っているというオラクルカード

『16時間は断食して胃を休めた方が健康にいい』というのを聞いてから、朝食は食べなくなりました。たしかに午前中は水分のみのほうが体の調子がいいです。でも、旅行に行ったら気にせず一日三食食べます! 朝ごはんのメニューってなんだか幸せになれますよね。」

——湘南らしい、ヘルシーな生活ですね!
「でも私、昔から夜型で。早寝ができないんですよ。だからいつも夜遅くまで起きちゃって、翌日早く起きなければならなかったりすると、すごく一日眠いんですけど(笑)。でもまぁ、なんとかなっているので。なんでも『こうしなければならない!』というのが苦手なんです。ヨガや瞑想も、やると気持ちいいから続けているだけで。いつか自然と早寝早起きができるようになれば、それはそれでいいかな、と思っています。」

——運動は何かされていたりしますか?
「二週間に一回、パーソナルトレーナーの方にトレーニングしてもらっています。以前は毎週通っていたのですが、筋肉がつきやすい体質みたいで、やりすぎるとムキムキになっちゃうんですよね。なのでほどほどにしています。とはいえ今年で45歳の体には、多少の筋肉が必要かな…と思っています。」



とてもパワフルで、ハッピーオーラ満開の亜希子さん。 取材中も、「ぶっちゃけ話すとね…」と、さまざまなことをオープンに話してくれた。
自分の芯を持ちながら、しなやかさやチャーミングさを持ち合わせる大人の女性といった印象だ。そんな亜希子さんも20代の頃は気持ちに浮き沈みがあったり、辛かった時期もあったという。


「10代、20代はとても楽しいこともあったけれど、すごく揺らぎがある時期でもあったので、ジェットコースターみたいなアップダウンはありました。高校を卒業して女優のお仕事を始めたばかりの頃が、一番辛かったかな。お仕事でというより、恋愛での影響が大きかったです。歳の離れた年上の男性と付き合っていたんですが、カリスマ性のある素敵な方だったし、知識も豊富だったのでいろんなことを教えてもらいました。ただ、ちょっと亭主関白風のところがあって。『ミニスカートは履くな』とか、彼も良かれと思って言っていたと思うのですが、『こうしたほうがいい!』と自分が気分でないことをやらされたりすることもありました(笑)。私も私で若かったし、『やだ』と言ってもすすめられると、わりと言うことを聞いちゃっていたんですよね。

私はちょっとアレルギー体質なところがあるのですが、『マクロビオティックで治せるから、教室に通うといいよ』と彼に言われて、通い始めたんです。そうしたら好転反応で肌にトラブルが出るようになってしまって。20代前半で、ちょうどおしゃれを楽しみたい時期なのに、全然楽しめなくなってしまって…。精神的にとても辛かったです。」

——それは辛いですね。
「もちろん、マクロビは素晴らしい学びだったんです。それで改善している人はたくさんいらっしゃると思います。でも本当に心から自分がやりたい、治したいと思ってやっていたらいいんですけど、『彼に言われたから』とか、『やらなくちゃいけない』といったような義務感でいっぱいになってしまっていたんです。今考えると、『これが正しいんだ!』と思い込もうとしていた気がします。そうなるとどんどん自分のことが嫌いになってしまうし、何が楽しいのかわからなくなってしまう。でもこの経験を通して、そうやって自分を押さえつけたり、自分の心の声を無視して選択していくような人生は、自分にとって一番やってはいけないことなんだ、ということがわかりました。なので、経験してよかったと思っています。」

——そのあと、マクロビはやめられたんですか?
「はい。10カ月ほど続けていましたが、やめました。生理も止まってしまったし、体重も30キロ台にまで落ちてしまって。結局入院までしました。化学的な薬も良くないからと避けていたんですが、塗ってみたらスーッとかゆみや痛みがひいて、とても気持ちよかったんです。薬もすべてを“悪者”と決めつけるのではなく、その時に応じて上手に活用すればいいのだと思う。“ちょっとの毒”は、私にとってこの世で楽しく生きていくために必要なもの。普段の食生活でもお酒を飲んだり、お肉を食べたりもしますし、それを心から『おいしい!』と感じる人でありたいと思っています。」


ヘルシーなものも、ジャンクなものも、せっかく食べるなら心から楽しみたい

——ストレスが一番の毒と言いますよね。
「自分が心地いいのが一番ですよね。ただ、とはいえ地球環境に悪いものや農薬だらけのものは、自分としても避けたいもの。なので、できる範囲でオーガニックの食材を選ぶようにしたりとか。何事もバランスですね。たまに『ジャンクフードが食べたい!』と思うこともあります。10回くらい食べたい、と思ったら食べます(笑)。その代わりそのときは、存分に味わって楽しみます。そうしていれば、依存したりやりすぎたり、食べ過ぎたりすることもないと思うんです。そうやっているうちに、自分の心と体の声も聞けるようになるんじゃないかな、と。」

——若い頃は揺らぎがあったとおっしゃっていましたが、今でも落ち込んだりするときはあるんですか?
「2年前くらい前に、久々に落ち込むことはありました。でも何かあったら日記ノートに自分の気持ちを書くようにはしていて。これは10代の頃から続けています。それが自分にとって自分と向き合う機会であり、セラピーになっている気がします。最近では、そこに瞑想が加わりました。」

 
中学生の頃から書き続けている日記


日課にしている瞑想

——今後は年齢を重ねるごとに、どんな女性になっていきたいですか? 何か描いているビジョンがあれば、教えてください。
「より自由に、より深くて広い、魅力的な大人の女性になっていきたいです。海外のおばあちゃんって、歳をとっても踊っていたりするじゃないですか。そんな風に私も歳をとりたいと思っています。キュートでカッコいい、成熟した女性には憧れます。どんどん今の自分を“剥いて”いきたいですね。 そして日本でもそんな女性がもっと増えたらいいなと、思っています。

昨年から月に1回くらいの頻度で、葉山で『tea session』というものをやっているのですが、10〜20人くらいの女性を集めて、カフェでお茶をしながらいろんなことを本音で語り合う場所にしています。私はもともと裏表なく、全部言いたいことを言っちゃうタイプなんですが、わりと言いたいことを言えていない人って多いと思うんです。そんな人でも安心して言えるような場所でありたいと思っています。」

——たとえばどんなことを話すんですか?
「何か一つテーマを決めて、それについて考えてきてもらうんです。たとえば、『女性性と男性性について』とか。お茶会ではどんなことを思ったかをみんなで語り合います。あとは自分にとってミューズっていたりしますよね? その人のどういうところが好きかとかを、改めて書いてもらったり。実はそこに書いてある特徴って、既に自分が持っていたりすることが多いんです。でも本人は気づいてなかったりする部分でもあるので、シェアして他の人からそれを教えてもらうことで、新しい発見になったりするんです。あとは、ざっくばらんにガールズトークしたりもしています(笑)。


tea sessionの様子

子どもが産まれて、葉山に来てから自分の考えやライフスタイルも変化して、さらにコロナがあって自分の内側を見つめる作業が増えていきました。自分との対話も大切ですが、それを通して感じたこと、経験したことをもっと発信していけたらいいなと、思っています。今はどんな形でそれを発信していけばいいのかを模索中なんですが、それを受け取った人がもっと自由に楽しんで生きられるようになったなら。そんな風に願っています。」


いろんな経験をしたからこそ、自分を知ることができる。 自分を知ることで何が起きても揺らがない自分になる。
だから年齢を重ねるごとに、楽に生きられるようになるのかもしれない。 何が正しいかは、自分の中にあるはず。心と体の声を聞くには、まずは自分を幸せにしてあげることから。
亜希子さんが話してくれたストーリーから、そんな本質的で大切なことを、気づかせてくれた。



桃生 亜希子
Instagram:@pinokosuga

Text by Sonomi Takeo